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第66話
永徳の家を出て壁に寄りかかりながらつたい歩き、近くのバス停の椅子に倒れるように座り込んだ。
100mほどの距離が何kmにも思え、肩で息をしながらスマホを取り出した。
この状態で佑真さんに会うと心配させるだろうし怒られるのはわかっているから今は会いたくないというのが本音だ……だけどもう歩く気力もない。
1コールで電話に出た佑真さんにバス停を告げるとすぐに行くと言って電話は切れた。
「――翔!」
椅子に座ったまま意識を手放していた俺を呼ぶ声に瞼を上げると泣き腫らした顔の永徳が心配そうに覗き込んでいた。
「どうした……」
「心配で……」
「大丈夫だって、迎え来てくれるから、お前は帰れ」
話すことでさえ辛くなってきているのに、これ以上面倒を増やさないでくれ。
でも……と帰ろうとしない永徳に、そうだこいつはこういう面倒臭い奴だったなとぼんやり考えているとハザードを点けた車から佑真さんが降りてくるのが見えた。
避けたかった状況だな……。
「翔!どうした!?」
力なく笑う俺を見て、振り向きざまに永徳に掴みかかり塀に叩きつけた。
「翔に何をした!」
「すいません……」
佑真さんの怒りに空気が震える中、されるがままの永徳が弱々しく謝った。
「佑真さん、ちゃんと話しますから……帰りましょう」
拳を振り上げた佑真さんの背中に倒れ込みそうになりながら腰に手を回す俺に目をやり怒りのおさまらない顔で舌打ちをした。
こんなに感情を表に出す佑真さんは珍しい。
その怒りの半分は俺にも向けられているんだと思うと許してもらえないんじゃないかと不安になってくる。
佑真さんに支えられながら悲痛な表情を浮かべている永徳に心配するなという目で頷いてから助手席に乗り込んだ。
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