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第69話

 次の日、永徳から『本当にごめん』とメッセージが届いていた。 悩んで迷ってそれでも謝りたくてこの一言を送ってきたんだろう。そんな永徳の気持ちが俺にはよくわかる。 『大丈夫だから気にしなくていい』 「お前は優しすぎるのか、お人好しすぎるのか……」 永徳に返事を送る俺の隣で佑真さんが不機嫌そうに溜息をついた。 「永徳って俺と似てるんですよ。だから気持ちがわかるっていうか――」 「俺の気持ちも少しはわかってもらいたいけどな?」 「焼きもち妬いてるように聞こえますよ」 「妬いているんだけど?」 拗ねたような佑真さんに笑いながら言うと真面目な顔で返されて戸惑ってしまう。 「あー……すいません」 「何?」 にやけてしまう俺を佑真さんが不満そうに見てくる。 だって女の子に告白すれば二つ返事でOKされそうなイケメンが俺の事で嫉妬するなんて顔面の筋肉が緩んでしまうのも仕方ない。 「永徳は……俺でもあり、兄さんでもあったんです……だから怖かった」 佑真さんの肩にこつんと頭を預け小さく呟く俺の頭を撫でる佑真さんの優しさが嬉しかった。 「俺が弟じゃなければよかったって言った時の兄さん笑っていたけど寂しそうだったんですよね……あれはどういう意味だったんだろ」 「それは水沢じゃないとわからないけど、でも多分……水沢なりに後悔していたんじゃないのか」 「そうかなぁ……だったらいいのになぁ……」 佑真さんの透き通るような声に本当にそうだったらいいのにと溢れる涙が止まらなかった。 「どんな理由があってどんな理屈を並べられても俺は水沢を許せないし、許さない。だから、すぐには難しいかもしれないけどお前は許してやれ」 佑真さんの言葉に息が詰まる。 この人はどうしてそこまで……人を憎んで生きるのは辛い。 忘れたくても忘れられない兄さんに苦しんできた俺を見てきた佑真さんだから、もう憎まなくていいと言ってくれているんだろう。だけど俺だって佑真さんにそんな思いしてほしくない。 「俺はもう兄さんを憎んでないから、だから佑真さんも憎まなくていいんです」 「……翔は強くなったよ」 佑真さんの首に腕を回し頬を摺り寄せる俺を抱きしめる強さがひとりじゃないんだと安心させてくれる。 俺が強くなれたとすれば佑真さんのおかげだ。佑真さんを好きになっていつも俺を支えてくれていた。 いつか俺も佑真さんを支えられる存在になりたいと強く思った。

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