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第74話
何となく佑真さんと顔を合わせづらくてバイトのない日でも大学で時間を潰してから帰り、家には寝に帰るだけだった。
今日も本屋に寄ってから帰り、家に着いたのは日付が変わる頃だった。
「翔、これはどういうことだ?」
玄関で靴を脱ぐ俺に俺が送ったメッセージを見せながら佑真さんが不機嫌そうな表情を浮かべていた。
「そのままの意味ですよ」
来週から始まる3週間の教育実習先が慎吾の家から徒歩圏内にあって、慎吾の家から通うと伝えただけだ。
どういうことだと聞かれても困る。
「どうして直接言わない?」
「佑真さん忙しそうだから」
「俺のせいにするな!」
佑真さんの顔を見るとどうしてもあの時の二人がちらついて、お似合いだよなと俺の心が冷えていく。
佑真さんの怒った顔を見ても不安だとか寂しいとか思わない。
俺はもしかしたら佑真さんの事が好きじゃなくなっているのか……。
「すいません」
「お前、何かあったのか?」
頭を下げ部屋に入ろうとする俺の腕を掴む佑真さんが心配そうな表情をしていても俺は何も感じなかった。
「離してください」
「翔!」
腕を振り解こうとする俺に聞こえる佑真さんの声でさえうるさく感じる。
「俺、佑真さんの事……好きじゃないかもしれない」
俺、もうだめかもしれない。そう思ったのと同時に口に出していた。
何も言わない佑真さんから腕をはずすとそのまま部屋に入った。
これで佑真さんが安心してあの子と付き合えるならそれでいい。
本当にお似合いだったからなぁ……今なら佑真さんが誰と付き合っても結婚したとしても祝福できる気がする。
そんな風に思える日が来るなんて思わなかった。
俺の佑真さんへの気持ちはどこに消えてしまったんだろう。
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