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 そこだけは散らかっていないベッドの上。大雅のふわふわした匂いがする枕。  俺は捕食される小動物の気持ちで、真上に迫る大雅の顔を見ていた。 「あ、あの……何で? 演技の練習って、俺じゃ何の役にも立たないし……」 「でも、普通に練習にはなるでしょ。どうせそのうち俺達も『ブレイズ』で絡むことになるんだし」 「だ、だからって。……あ、そうだ。いま俺、ホットケーキ食べたし。こういうことする前は食事するなって、大雅が……」 「朝飯抜いたなら大丈夫。その前にも洗ってきたんでしょ」  もう、どうあっても逃れることはできないみたいだ。竜介はベッド脇の椅子に座り、俺達を見てニコニコ笑っている。 「頑張れよ少年。大雅はタチ役も慣れてるから安心しろ」 「そ、そういう問題じゃっ……!」 「竜介は入って来ないでよ。これは俺と亜利馬の練習なんだから」 「おう、分かってるさ。俺は観客に徹するよ」  好きな男の前で俺を抱くなんて、大雅は一体どういうつもりなんだろう。竜介だって、どうしてそんな光景を平然と見ていられるんだろう。獅琉と潤歩もそうだったけど……彼らにとって「セックス」って、仕事の延長みたいなものなんだろうか。 「――んっ」  大雅のハチミツフレーバーなキスで口を塞がれ、俺は咄嗟に目を閉じた。入ってきた舌が俺の舌を絡め取り、息もできないほど激しく口腔内をかき回される。 「ん、んゃっ……、あ」  無表情で冷めた印象しかない大雅が繰り出すキスは、まるで頭の芯まで燃えるような熱を持っていた。 「……甘い」 「た、大雅も……」 「亜利馬、キスだけでそんな顔赤くなるの。俺のベッドで鼻血出さないでよ」 「だ、だったらもう、やめ……」 「やめない」  視線を合わせたまま、大雅の手が俺のベルトにかかる。 「こうするのが、一番手っ取り早くお互いを知れるから」 「………」  その言葉を聞いて何だか無性に悲しくなり、俺は口を噤んだ。  俺と同い年の彼は、今までどんな経験をしてきたんだろう。周りに馴染めないと言っていたけれど、その中でも時にはこうして誰かと関係を持っていたのだろうか。  誰かと身体を合わせることで、自分というものを保ってきたのだろうか。 「……分かったよ」  観念して溜息をつくと、大雅の冷めた目が少しだけ大きくなった。 「その代わり、俺ほんとにまだ初心者だから……あんまりハードなことはするなよ」 「……ハードなことって?」  大雅の手がジーンズの中へ入ってくる。 「んっ、……」 「こういうの?」 「……ち、違う……けど、……」 「じゃあ、なに」 「わ、分かんない……」  強くも弱くもない力加減で、下着越しに俺のそれが揉まれる。大雅の目は既に元の冷めたものに戻っていた。だけど、その口元だけは何となく楽しそうに弛んでいて…… 「亜利馬、すぐ反応するね」 「う、うるさいっ……んあぁっ!」  下着の中に大雅の手が入ってきて、俺はその手の冷たさに思わず背中を浮かせて仰け反った。握られたそれが凍るようだ。その中心から体中にぞくぞくとした悪寒のようなものが走り、恥ずかしさではなく寒さに体が震える。 「い、や……やめっ、……大雅、放し、て……!」 「……熱い」  ホッとしたような溜息をついて、大雅が下着の中で俺を握り揉みしだく。そうされているうちに段々と、大雅の手の冷たさよりも俺自身の熱の方が上回ってくるのを感じた。 「ねえ、俺のも触ってよ」  抑揚が無いながらも甘えるような声で言って、大雅が自分のファスナーを下ろした。 「あ、……」  片手で下げたその部分から飛び出した大雅のモノに、恐る恐る下から触れる。ここまで冷たかったらどうしようと思ったけれど、当然ながらその熱さは俺とほぼ同じだ。  お互いのそれを片手で握り、擦りながら、二人とも息があがっていた。 「気持ち良い? 亜利馬……」 「う、うん……」 「……俺も。もっと強くして」 「ん、――うん」  午前中に撮影でも同じようなことをされたのに、何故だかそれよりずっと気持ちが高ぶってくる。カメラがないだけでこうも違うものなんだろうか。それとも、大雅のような綺麗な男が相手だからだろうか。  考えても分からなくて、俺は必死に大雅のそれを片手で扱いた。  大雅が俺の着ていたシャツを捲り、「亜利馬、ここも感じるの」と指で乳首を押した。 「んぁっ、……わ、割と……」 「俺も好き」  大雅が自分のシャツを捲り、露出した乳首を俺に見せる。その姿が妙に艶めかしくて、俺は……両手で大雅の体を抱きしめて引き寄せ、その薄ピンク色の乳首を口に含んだ。 「あっ……!」 「ん、……ん……」  こんなことするの初めてだ。  俺は夢中で大雅の乳首を舌で転がし、音をたてて啄み、遠慮なく力を込めて吸った。 「あっ、……亜利馬、がっつきすぎ」  口の中で尖り始める大雅の乳首に、更に気持ちが高ぶってしまう。味なんてしないのに何故だかとろけるような甘さを感じて、もっともっと欲しくて更に吸い付いてしまう。まるで赤ん坊だ。 「少年」  椅子に座って脚を組みながら、竜介が俺に言った。……すっかりその存在を忘れていた。 「空いている方の乳首も指で可愛がってやると、大雅が喜ぶぞ」 「は、はいっ……」 「やっ、――やだ、竜介、入ってくるなって、……」 「助言しただけさ。俺はお前達に指一本触れてない」  下からだとやりづらくて、俺は大雅の体を抱きしめたまま体を回転させた。自然とそんなふうに体が動き、やっぱり俺も男なんだなと思う。  上になって大雅を見下ろしながら、俺はゴクリと唾を飲み込んだ。 「はぁ、……は、……亜利馬の馬鹿……」  胸元までシャツは上がっているし、下着からは屹立したそれが飛び出している。そんな恰好で息を荒くさせながら見つめられると、もう、理性が吹っ飛んでしまうじゃないか。 「た、大雅……何か分かんないけど、すごいエロい……」 「……言っとくけど、亜利馬にバックは掘らせないからね」 「あっはっは、プライベートでは俺にしか許してないもんな、大雅」 「竜介は黙ってて」  鼻の奥に生ぬるい感触がある。  思った瞬間、大雅の白い頬に真っ赤な俺の血が一滴。ぽた、と落ちた。 「あ、ご、ごめん大雅。ティッシュ、……」 「……最悪」  指先で頬の鼻血を拭った大雅が、そのまま自分の指を舐める。 「っ、……た、大雅っ!」  俺は思い切り鼻をすすってから、その体にむしゃぶりついた。 「ちょっ、と……亜利馬っ……鼻、拭いてよ」 「大丈夫。少ししか出なかったから、もう止まった」 「何なんだ、もう……あっ、あ――!」  竜介の助言通りに舌と指を使って大雅の乳首を両方愛撫し、更にもう一つ空いた手で股間のそれを揉みしだく。俺と同い年の大雅が出す声も躊躇わず喘いでいるのを見ると、俺自身の露出したそれもぐんぐん熱くなってゆくのを感じた。 「は、あ……あぁ、……」  手の中に握ったそれは、分かっていたけど俺より大きい。俺は少しの間逡巡してから身を起こし、体を後方にずらして大雅の股間に顔を落とした。 「――やっ、亜利馬、馬鹿っ……!」  誰に教わったわけでもないのに、自然と体が動いてしまう。当然、自分から進んで男のモノを咥えるなんて初めてのことだった。 「ああっ、あ……! もっとゆっくり、亜利馬っ、……」  ふと、俺の顎に大きな手が添えられた。――竜介だ。 「その小さい口で思い切り吸ったら痛いだろう。少しずつ舌で上から舐めて、焦らすように、ゆっくり……」  竜介の低くてエロい声に誘導されながら、俺は口から抜いた大雅のそれをゆっくりと舌で愛撫した。 「それから舌で、根元から先端を舐め上げる感じだ」 「こ、こうですか」  屹立した根元に舌先を触れさせ、細い一本線を引くように先端までを舐めてみる。 「少し違う。――こうだ」  竜介がベッドの脇に膝をついて身を乗り出し、横から大雅のそれに唇を近付けた。  伸ばした舌先ではなく舌の付け根から全体を使って、ゆっくりと味わうように、時間をかけて舐め上げる。 「ふあ、ぁっ……りゅう、すけ……!」 「やってみろ」  俺も竜介と同じように舌全体をべったりと大雅のそれに押し付けながら、ゆるゆるとした動きで根元から先端を愛撫した。 「視覚的にもエロいから画面映えする。特に大雅はこれが好きでな」 「やっ、……ちょっと、いい加減にっ……あぁっ!」  竜介と二人で大雅のそれを何度も舐めていると、突然竜介が片手で俺のジーンズをずりおろした。ベッドの上で四つん這いになっていた俺の尻が露出し、そのまま軽く叩かれる。 「そろそろだな。上に乗ってやれ、少年」

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