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「ほ、ほんとに……そんなことしても、……」
俺の問いかけには大雅が答えた。
「いいよ別に。……ていうか、挿れられんの亜利馬の方なんだから、俺に気遣わないでよ……」
「……う、うん」
竜介に下ろされたジーンズと下着を完全に脱ぎ、ぼんやりしながら膝をついて大雅の上に跨る。上を向いた大雅自身のそこには竜介がスキンをつけた。それから竜介がどこにあったのかローションの小さなボトルの蓋を歯で開け、手のひらに出してスキンの上から大雅のそれに塗りたくる。
「そのまま腰を落とせ」
「……ん」
俺のそこへちゃんとあてがわれるよう、竜介が根元を握って位置を調整した。
「あっ!」
「――んっ!」
俺と大雅は二人同時に声を発し、竜介の見ている目の前で繋がった。
「うーん、二人とも綺麗だぞ。見ているだけでも余裕で抜けそうだ」
「あ、りま……動いて」
大雅の胸に手をつき前かがみになると、腰を上げた時にそのままそれが抜けてしまう。もう一度竜介の手を借りて中へ挿れてから、俺は少しだけ上体を仰け反らせて後方に両手をついた。
「あっ、――あっ、大雅っ、……」
大雅の上、大きく脚を開いた格好で何度も腰を上下させる。その度に勃起した俺のそれが一緒に揺れて恥ずかしかったけど、それよりも中を擦られる感覚が刺激的すぎて……腰が、止まらない。
「どうだ、大雅。新人の腰使いは」
「……まあまあ。……んっ、気持ち、いい……」
「お前も揺すってやれ」
「ふ、ぁ……いくよ、亜利馬」
大雅がとろけるような目で俺を見上げ、腰を浮かせて俺のそこを突き上げた。
「あ――あっ、あんっ……、大雅っ、……お、奥に……!」
「ん、ぁ……亜利馬の中、狭っ……」
「妬けるな。俺も混ぜろ」
竜介が大雅に顔を寄せ、吐息の洩れるその唇を激しく塞いだ。
「ん、んぁ……りゅう、すけ……はぁっ、……」
濃厚に絡み合う舌。竜介を見つめる熱っぽい大雅の目。そうしながらも俺の中を貫く大雅の腰と、寝室に響く三人の息使い。とんでもなく官能的で、それからどことなく背徳的で、何だか頭の中に靄がかかって夢の中にいるような気分に陥る。
「イきそうか、大雅?」
「ん、うんっ、あぁっ、……もう、ちょっと……」
「亜利馬はどうだ」
「あっ、あ――、お、俺もっ……」
大雅とキスをしながら不敵に笑って、竜介が揺れる俺のそれを握った。
「あっ……!」
「こういう時は二人同時に、だろ」
中を突かれながら前を擦られる感覚は堪らない快感だった。まだ後ろだけじゃ気持ち良さが分からない俺だけど、そこに刺激を与えられるだけで凄まじい高揚感が沸き上がってくる。
「あぁ、あ――い、イきそ、っ……大雅……!」
「……ん、ぅ、俺も……」
竜介と舌を絡めながら、大雅が俺に向かって手を伸ばした。その手を取り、指と指とをしっかり繋ぐ。
「あ、あ……イく、大雅、イッちゃ、――あぁっ!」
「ふ、あぁ……」
俺の先端から体液が飛んだのと、大雅が体を震わせたのと、殆ど同時だったと思う。大雅の白い胸に飛んだ俺の体液は、午前中に出した割には濃い方だ。
「ん、は……」
ゆっくりと腰を持ち上げて中から大雅のそれを抜き、そのまま体から力が抜けて行くのに任せてベッドの上へと身を倒す。大雅と並んで寝転がり息を整えていると、竜介が大雅のそこからスキンを外して俺達の頭を撫でてくれた。
「いいものを見せてもらったぞ! ありがとうな、お前達」
「………」
大雅は何も言い返せない様子で、荒い呼吸を繰り返しながらただ竜介を睨んでいる。
――な、何でこんなことになったんだっけ。
*
よく分からないけど「鑑賞代だ」と言って、その日は竜介が俺達にイタリアンのディナーをご馳走してくれた。
「竜介さん……ま、またホットケーキ食べるんですか?」
「これはパンケーキだ。デザートはいつ食べても美味いからな。この店は獅琉に教えてもらったんだぞ。俺の数少ない甘党仲間なんだ、あいつは」
当然俺が作ったものよりも立派で美味しそうなパンケーキを食べながら、竜介が笑う。
「大雅に付き合ってくれてありがとうな、亜利馬」
「い、いえそんな……」
「こいつがデビューしてから俺が兄貴分として面倒見てやってるんだが、なかなか同年代の友達ってのができなくてな」
大雅は黙ってパスタを頬張っている。
「人見知りするが、根はいい奴だ。こいつはこいつで『ブレイズ』に加入することになった以上、亜利馬とも仲良くなりたいと思ってるのさ」
「もちろん。俺達もう友達じゃん、大雅」
裸の付き合いもしたわけだし、と心の中でそっと付け加える。大雅は目を伏せて俺から視線を逸らしながらも、頬を赤くさせていた。
「……竜介。ちょっと耳塞いでて」
「うん?」
そんな大雅の命令を受け、竜介が律儀に耳を両手で塞ぐ。それを確認した大雅が、椅子から上半身を伸ばして隣の俺に耳打ちした。
「……友達だから、亜利馬も竜介とセックスしてもいいよ」
「え?」
「前、竜介に言われた。『友達ができたら、大事なものを分け合え』って」
「そ、それってそういう意味じゃないでしょ。俺は竜介さんとそんなことするつもりないって……あ、撮影での話?」
「撮影でも、普通の日でも」
どこか考え方がズレている大雅だが、彼にとって竜介が「大事なもの」であるのは充分に理解した。
「竜介さんのこと好きなんだね」
「亜利馬のことも好きだよ」
「ほんと? 嬉し――」
「だから亜利馬のことも、竜介と分け合うから」
「え?」
大雅が笑った。
それはもう、俗に言う小悪魔のようなイタズラスマイルだった。
『お兄ちゃんとふたりの秘密』『僕とお兄ちゃんの熱い夏』『ブラザーズ1・2・3』……ボーイズレーベルから出ている大雅と竜介の作品は兄弟ものが多く、裏ジャケットの画像にはどれも普段の彼からは想像できないほどのとろけ顔をした大雅が載っている。
これだけ刷り込まれたら確かに懐いちゃうだろうなぁ、と俺は苦笑した。
「別に、撮影で竜介が他のモデルと絡んでも嫉妬なんかしないよ。そんな性格だったらこの仕事してないし」
大雅はそう言っていた。そして、
「でも、プライベートでは俺のだから」
はっきりそう言う大雅の横顔は凛々しかった。ただ竜介本人は全く気付いていない様子で、大雅はいつも竜介の行動にやきもきしているようだ。
「またホットケーキ作る時は竜介さんも呼びなよ」
「……3Pする気?」
「ち、違うって! 何でそんなふうに考えるんだよ……」
そんなわけで……
ちょっとだけ変わった友達ができたその日は、俺がホットケーキの作り方を習得した日でもあり、また「こういう恋の仕方もあるんだな」と妙に納得させられた日でもあったのだった。
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