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料理を残らず平らげてからもまだまだプールではしゃぐ俺をよそに、獅琉と潤歩が「寒くなってきた」と隣のジャグジーへ移動する。
「あったけえぇぇ。ジェットバス最高」
「潤歩、大の字にならないでよ。狭いなぁ」
「全裸のくせにうるせえんだ、お前は」
関係なくない? とか何とか言い合っている二人。それを横目に意味なくプールの中を犬かきで泳いでいると、プールサイドに座った大雅から「亜利馬」と声をかけられた。
「なに?」
大雅の手には房から取った大ぶりのブドウが三つ四つ乗っている。そしてその一粒を摘まんだ大雅が、そのまま俺に向けて投げの構えをとった。
「え、えっ! 無理だって!」
「キャッチ」
「――んあぁ!」
放り投げられたブドウをぎりぎり口でキャッチする俺を見て、珍しく大雅が笑う。
「イルカみたい」
「大雅ってちょっとSだよね……」
プールに浸かっている大雅の足の裏をくすぐってやろうかと思ったけど、そのまま蹴っ飛ばされそうだからやめておく。俺は口の中でブドウを味わいながら大雅が座っているその横に両手をつき、思い切りバタ足をした。
「楽しそうだな少年達」
大雅の背後までやって来た竜介が、スマホで俺と大雅を撮影している。
「竜介さんも入ればいいのに」
「俺はいいよ。今日は監視員、ライフセーバーだ」
「………」
それを聞いた大雅が足から水の中へ飛び込み、プールの中央までスイスイ泳いで行く。突然どうしたんだろうとそれを見つめる俺と竜介から離れたところで、大雅がこちらを振り返り、両手を伸ばして言った。
「助けて」
竜介が苦笑し、仕方ねえなぁ! と服のままプールへ飛び込んだ。――水飛沫が上がり、勢いに任せて竜介が大雅を抱き上げる。微笑ましいバカップルめ。
「亜利馬、次の撮影って竜介と撮るんでしょ」
竜介に抱えられたまま大雅に言われて、突然のことにギクリと心臓が飛び上がる。
「な、何で知ってるの? あ、竜介さんに聞いたのか……」
「わざわざ見学に来てもらった甲斐があったな。よろしく、亜利馬」
「……は、はい」
恐る恐る視線を向けると、大雅は平然とした顔で首を傾げていた。前に「竜介が誰と撮影しても気にしない」と言っていたけれど、あれは大雅の強がりで、実際はあんまり気分の良いものではないんじゃないかと、……心配してしまう。
だけど大雅はそんな俺の思いを一蹴するかのように、「楽しみ」と口元を弛めて笑っていた。
「頑張ってね亜利馬。……竜介に酷いことされたら、俺に言っていいよ」
「はっはっは。今から大雅のお仕置きが怖いな!」
分かっているのかいないのか、ジト目の大雅の頬をつねって竜介も笑う。
「おーい、ガキ共とその保護者。そろそろ中入ってゆっくり飲もうぜ」
「今日も寝落ちしそうだぁ」
ジャグジーから声をかけてきた潤歩と獅琉に手を振って応えて、俺達もプールを上がった。
『亜利馬くん、応援します。大変なお仕事だと思いますが、これからも頑張ってください』
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