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「いくよ、亜利馬」
「うん……来て、大雅」
甘い囁きとは裏腹に体は震えていた。竜介との絡みを撮って以来、俺の体がバックを犯される快感というものを知ってしまったからだ。今までは刺激がないとすぐ萎えてしまっていたペニスも、これから挿入されると思うだけで芯を持ち硬くなってしまう。
「はあぁ……」
ゆっくりと貫かれる感覚が堪らない。まるで体の内側の全部を愛撫されるような心地好い刺激が、腰から背中、背中から頭のてっぺんにまで惜しみなく行き渡る。熱と熱の触れ合いに心の中までとろけ出し――何故だかこの瞬間、誰よりも大雅が愛おしくなる。
「……温かい、亜利馬」
「た、大雅、も……。あっ、あ……」
「揺すると気持ちいい?」
「う、……うん、大雅の太いとこで、擦られると……声、出る」
スローな動きで腰を引き、またゆっくりと俺の中へ入ってくる大雅。激しくされると途端に余裕が無くなるけれど、こうして時間をかけてもらうと理性がはっきりしている分、余計に感覚が敏感になってしまう。
カメラが俺達の結合部を中心に撮り、大雅の動きと同じくゆっくりと上へあがって行く。それから温泉と快楽の熱で真っ赤になった俺の顔を辱めるように映し、続いて吐息を漏らしながら腰を振る大雅の顔を撮る。
「ちょっと奥まで挿れるよ……」
耳元で囁かれた瞬間、うなじが粟立った。
「あぁっ……!」
俺の腰を強く押さえ込んだ大雅が、更に奥の奥までを探るようにじわじわと侵入してくる。これ以上は無理なのに、体を倒して強引に腰を押し付けてくる。
「だ、だめ……大雅、もう入らないっ……」
「もうちょっと」
腹の中が苦しいのに、それはどこかで確かな快感に繋がっていた。未知の感覚が怖くて零れた涙を大雅がキスで拭い、「大丈夫」と囁かれる。
「俺を信じてよ、亜利馬」
「で、でも……入っちゃ駄目なとこに、入っちゃうから……」
「……どこで覚えたの、そんなの」
微かに耳元で大雅が笑った気がした。そして――
「っ、……あ、あぁっ! 大雅っ、あ……!」
一気に引き抜かれた硬いそれが、また一気に奥の奥へとぶつけられる。さっきまでのスローな動きが嘘のように何度も、何度も、激しく。
「や、あぁっ……! そこはっ、あぁ――!」
大雅の動きに合わせて膝元でお湯が揺れ、一定の間隔で俺の太腿に跳ねる。擦られているのは前に竜介が教えてくれた、俺の「イイところ」だ。視界も頭の芯も弛み、涙と声が止まらない。
「亜利馬、イきそうになったら言ってよ」
「ん、あ……! んんっ! 気持ちいっ、そこ、気持ちいぃからっ、……!」
「もうイきそうなの……?」
腰を押さえていた大雅の手が、前で揺れる俺のペニスを強く握った。
「やっ、……!」
「お湯に出したら駄目だよ。……分かった?」
薄笑いと共に大雅に囁かれ、何度も頷く。何だっていいからとにかく射精したくて、俺は訴えるようにカメラを見上げた。
「お、俺……、あっ、あ――」
カメラの背後で二階堂さんが頷く。瞬間、俺は――
「イきそう……大雅、イくっ……」
「……俺も……」
*
「ふああぁ、気持ち良かった!」
勢いよく部屋の襖を開けて中に入ると、浴衣に着替えた獅琉たち三人が一斉にこちらを振り返った。
「亜利馬、大胆になってきたね。大雅との絡みそんなに良かったんだ?」
「ち、違います獅琉さん。その後の温泉が良かったって意味です!」
お湯に浸かりすぎてフラフラの大雅を支えながら、竜介が笑う。
「はっはっは、照れなくていいぞ!」
「違いますってば! ……ていうか皆、浴衣に着替えたんですね。部屋着持ってきたけど、俺も浴衣着ようかな」
「せっかくだしね、この方が泊まりに来たって感じするでしょ」
浴衣姿の獅琉は色気に拍車がかかっていた。竜介も武士みたいな貫禄があるし、潤歩も……まあまあ似合っている。
「あ、でもこれから飯ですよね。着替えるのは帰ってからの方がいいかな」
時刻は四時。夕飯には早いけれど、朝も昼も少ししか食べていないから全員腹が減っている。獅琉達は寿司が食べたいと言っていたし、外に食べに行くなら着慣れない浴衣よりは服のままの方が良いのではと思う。
すると、獅琉が部屋にあったパンフレットを捲りながら言った。
「調べたら、旅館の三階に美味しいお寿司屋さんができたんだって。そこ皆で行こうかって話になって」
「そうなんですか? じゃあ俺も浴衣着ます!」
それから五人で三階へ移動し、「寿司処 香月」で美味しいお寿司をたくさん注文した。時間が時間なだけに、俺達以外にお客さんはいない。
「えっと、次はウニとアワビでしょ。大トロ、イクラ……」
獅琉は目を輝かせてメニューを見ている。五人用のテーブル席に次々と運ばれてくる寿司を片っ端から平らげて行く俺を見て、潤歩が「回転寿司じゃねえんだからよ」と笑った。
今日初めてと言っても良いくらいの食事。ネタも新鮮で、大好きなトロが口の中でとろけてゆくのに感動してしまう。
俺以外の四人もその味に大満足な様子で、潤歩と竜介はイクラの軍艦巻きを五皿も食べていた。
「ああ、お腹いっぱい! めちゃくちゃ美味しかった!」
部屋に戻る廊下を歩きながら、ぽっこりと出た腹をさする。早起きと撮影、そこに満腹感が加わって、何だか眠くなってきた。
「亜利馬、あれだけ持ってきたお菓子、もう食べられないんじゃない?」
獅琉が笑いながら言って、俺もそれに笑顔で返す。
「大丈夫です。休憩したら、夜くらいにはまた腹減ると思います!」
「俺は甘いモンが食いてえなあ」
「そう言えば竜介さん。お土産売り場に美味しそうな甘いお菓子も売ってましたよ」
「本当か。行くぞ獅琉!」
「えー、今は腹いっぱいで選べないよ……」
「竜介。ついでに美味そうな酒も買って来いよ」
「任せろ、潤歩」
竜介が獅琉の腕を引いて、無理矢理ラウンジの方へと歩いて行く。夜はまだまだこれからだ。楽しみで仕方ない。
「枕投げとかやりますか、潤歩さん」
「本物のガキかお前は。そんなモン高校生でももうやらねえだろ」
「え。俺、高二の時やってましたけど。……大雅はどうだった?」
「俺は……修学旅行、行ってない……行ってもどうせ楽しめなかったし」
「そっか。じゃあ、今日はどう?」
「今日は楽しい。……もっと泊まりたいって思うくらい、凄く楽しい」
俺は大雅の手を握り、満面の笑みを浮かべて言った。
「俺も楽しい!」
「ガキ同士でデキてんのか、お前ら」
潤歩も笑った。
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