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第3話 百樹「本当に嫌だと思ってる?」
怜斗はセックスが上手い。
顔の良い男がセックスまで上手いとは少々腹立たしいが、上手いものは上手いのだ。
俺は片手ほどの男しか寝ていないが、怜斗はダントツで俺をイかせるのが早かった。
「ああっ、イく……それ以上はダメだって……っ!」
「ふがふがふがふが……」
「顔面蹴り入れるぞコラ」
そう、セックスは上手い。
もちろん前戯も上手い。
しかし何度も言うがこの男、顔面と言動が一致しないのである。
「フェラするか喋るかどっちかにしろよ!」
「ぷは……っ、ごめん百樹。百樹があまりにも可愛くて、つい……」
「つい? ついってなんだよ」
「百樹の出したもの全部飲みこむまで離したくなかったんだ」
「ーーっ!」
何なんだこいつ。マジで何なんだよ。
俺は怜斗のそういうところが本当に嫌いだ!
ドーベルマンとかシベリアンハスキーとか、そっち系の大型犬みたいな見た目のくせに、俺が強く出たら途端にチワワに成り果てる。
ほのかに潤んできた怜斗の顔を見たくなくて、俺は枕で自分の顔を隠した。
「モモちゃーん?」
「……」
「……百樹?」
「……」
「ごめん。俺、また百樹を怒らせるようなことしちゃったかな」
馬鹿みたいだ、俺。
俺こそ怜斗を悲しませてしまった。
でも今は顔すら見せられない。
「……今日は止めにしよう」
「え?」
何だって?
それはちょっと話が違う。
「待てよ、怜斗。まだお前はイッてねえじゃん」
俺はがばりと起き上がり、真正面から怜斗と向き合った。
案の定、怜斗の鼻頭は赤くなっていた。
「お前は俺としたいんだろ? 俺だって全然満足してないし、大体お前、今日は中にすら出してねえし」
「俺は……俺は、百樹が嫌がることはしたくない」
「俺が?」
聞き間違いか? という意味で訊くと、怜斗はこくりと頷いた。
「百樹が好きだ。愛している。だからこそ、百樹に嫌われたくないし、百樹が嫌がることなんて絶対したくない。さっきのアレも俺が夢中でしゃぶりついてしまったばっかりに……」
「うん、ちょっとばかり生々しいけど、それは別にいいんだ」
「いいの?」
「それにな、怜斗……」
俺は怜斗の手を取り、自らの秘部に充てがった。
「本当に嫌だと思ってる?」
「……?」
「本当に、俺が嫌だと思ってるのか? 俺が怜斗とすることが?」
「嫌じゃないの?」
「嫌だったらこんなにドロドロにしてお前のこと待ってねえよ」
(ああ、百樹。お前は何て良い男なんだ)
「んんんんんんん下ネタ……ッ」
「おいこら口に出てんぞ」
俺としてはもうちょっとロマンティックな夜にしたいものだが、相手が怜斗じゃ仕方ない。
怜斗の相手は俺だけなんだ。
このくらいの独占欲は許されるだろう?
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