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第5話 怜斗「……俺、今お前に殺されかけた……」
俺の朝は早い。
いくら深夜過ぎまで怜斗とセックスしていたとしても、何回でもイかされたとしても、昔からの習慣で朝は早く起きてしまうのだ。
キングサイズのベッドには、俺を腕枕したまま爆睡している怜斗がいる。いつからこうされていたんだろう。腕、鬱血していないだろうか。
心配になって起き上がろうとすると、寝ているはずの怜斗に肩をがっしりと掴まれた。
「もう少し、このままでいさせてくれ……」
眠たげな怜斗の声は少し掠れていて、いつも以上にセクシーだ。
「…………百樹」
どうやら寝言らしい。
俺は怜斗に寄り添い軽く頬にキスをして、再び眠りに就いた。
どうせ今日は日曜日だ。少しぐらいダラけたって誰も文句は言わないだろう。
俺が起きたのは午前十時くらい。がっつり寝すぎたかなと思ったが、横の怜斗はまだ爆睡していた。流石に寝過ぎだと思うので、もう少ししたら強制的に陽の光を浴びせてやることにする。
怜斗を気遣って静かにベッドを降りた俺は用足しに行き、それからシャワーと歯磨きをする。鏡で見る寝起きの自分は、明らかに疲れた顔をした三十男だ。
もう若い頃のように完徹できないし、腹回りに脂肪も付き始めてきたし、何というか、ハリもなくなってきた気がする。
そして世間的には充分『結婚適齢期』だ。
家族はもちろん職場でも結婚しないのか、彼女はいないのか、と嫌なほど聞かれる。俺はそれらの全てに縁がないのでと答えていたが、俺はいつ怜斗との関係をオープンにできるんだろう。
「……いっそ海外に飛んじゃう?」
鏡越しの自分に問う。断片的な記憶しかないが、昨晩俺は夢を見ていた。
どこかの国の教会で俺と怜斗が結婚する夢。ふたりで純白のタキシードを着て、互いの親族や友人知人達に祝福されて……そして養子か里子を育てる。理想的な俺たちの未来だ。
「怜斗、かっこよかったなあ……」
白いタキシードなんて俺は着せられている感満載なのに、やはり怜斗は悔しいほどに似合っていた。
「……俺はいつもかっこいいだろ?」
「怜斗! 起きてたのか? いつの間に……」
赤いボクサーパンツ姿の怜斗は、起き抜けの姿ですらイケメンである。普段はオールバックだが前髪が全部降りているだけで印象が幼くなり、また違ったタイプのイケメンになる。相変わらずズルイ男だ。
俺が洗面台を占領していたので、怜斗は先にトイレに向かった。寝ぼけているのかフラフラとした足取りだ。
「大丈夫かよ、あいつ」
ああ、そうだ。溜まった洗濯物も片付けてしまわないと。今日は天気が良いからシーツやタオル類やふたりのワイシャツをまとめて洗ってしまいたかった。
事件が起こったのは、俺が所用で外出した十数分の間だった。
「……俺、今お前に殺されかけた……」
「そりゃそうだろうが! 白いもんばっか洗っていたのに、よりにもよってお前が赤パンぶっこんだせいで全部ピンクになっちまっただろうが責任取れよ!!!!」
そう、俺が白系のものを洗濯機に入れた後、そういえば洗剤が切れていたことを思い出し、近くのドラッグストアへ買い物に行っている途中。
用足しを済ませた怜斗がシャワーを浴びる際に履いていたボクサーパンツをそのまま洗濯機に投入していたのだ。
そして俺は洗濯機の中身をろくに確認せずに洗剤を入れスイッチポン。
洗い終わった洗濯物は全部ピンク色。
その中に元凶である怜斗の赤パンを見た瞬間、思わず俺は怜斗にヘッドロックをお見舞いしていた。
「すみません……責任取って百樹の将来は俺がもらいます」
「責任ってそういう意味じゃなくて……」
「やっぱり百樹! 俺と結婚しよう!!!」
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