24歳も年下でありながら、未成年らしくない色気を醸す昴にくらくらする―― ましてや、ぼくは叔父であり、昴は甥っ子なのだ。 どれだけのタブーが、ぼくたちの間には横たわっているのだろうか。 　――子どもの頃から、気配が薄いと言われてきた。 世界に馴染めないぼくを、昴だけが必要とする。 消えそうなぼくの輪郭線を濃い鉛筆でなぞり、留めようとする。 「寒かった……春光(シュンコー)があっためて……」 　鼻を鳴らす昴が愛おしい、狂おしい。 弾かれたように唇を奪い合い、舌を絡ませる。 飴でも舐めていたのか、昴の口内は人工的な苺ミルクの味がする。 互いの涎をすすり合い、乱暴に服を脱がせ合った。 　緑色に紺色の斜めのストライプが入ったネクタイを奪い――ぼくや颯も、同じデザインのものを首に巻いていた。ぼくたちの時代には、えんじ色だったが。 紺色のブレザーを剥ぎ、敢えてYシャツは脱がせないまま、割れた腹筋に舌を這わせる。 「――えっち」 　昴は上目遣いをして、何故か初(うぶ)な仕草を見せる。 　――そんな柄ではない癖に。きみがどれだけの女性を泣かせてきたのか、叔父さんは知っているよ。 突如として笑いが込み上げ、真面目に続けることが難しくなった。 　拗ねる昴をキスでどうにか機嫌を取り、腫れ上がったものを手のひらでしごいてやった。 昴の吐精はあまりに早く、年齢の差を思い知らされる。 　――昴は時々、厭になるくらいかつての颯に似ている。 　ぼくの姉の冬美が、この部屋に昴を連れてきたのは、今から一年前のことだった。 それまで一度も顔を合わせたことのなかった甥っ子と、ぼくもわけがわからぬままに、同居する手筈が整えられていた。 　ぼくの実家である松菱家は、代々政治家を輩出している。 ゲイであるぼくは早々に父から絶縁されて、今でも松菱の姓は名乗っているものの、長いこと実家には帰っていない。 　ぼくと颯の関係は父の知るところであったが、後々に父の公設秘書を務めることになった颯は、ぼくの姉を妻として宛がわれた。 　関係が継続していたはずの恋人(颯)と姉が結婚することをぼくが知ったのは、二人の結納の席である。 ぼくが颯と会ったのは、それきりだ。 颯は、松菱家の婿養子となった。 　第二次性徴前からゲイであることを自覚していたぼくと違い、颯は最初から最後までヘテロだった。 颯はただ、ぼくを好いていただけだった。 　父にぼくたちの関係が露見した際、ぼくは自分の性的趣向よりも、ヘテロである颯を獣道に誘い込んだことを猛烈に責められた。 父はぼくに馬乗りになって、問答無用で殴り続けた。 “颯君の人生を台無しにする気か！”と叫ぶ父の声が、今でも耳から離れない。 　――父の言う言葉は、まったくその通りだった。 遠く時間が過ぎ去った今なら、わかる。