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 初月(はつづき) 奏汰(そうた)。  彼がαであることは、βの一樹にすら一目で判った。  一樹が初めて初月を見たのは、柔和な笑顔で校門に立つ彼が、新入生への挨拶をしている所だった。  初月は一樹や梓より二つ先輩で、入学した高校の生徒会長を務めているらしい。  さらりとした色素の薄い髪、人のよさそうな垂れ目。  聞くもの全ての心を従わせる凛とした声、しゃんと伸ばされた背筋。  その背に見える桜の淡い桃色でさえ、初月の前では彼を引き立たせるための置物のように見える。  どれを取っても、一樹には敵わないものばかりだった。  もし、こんな人が梓の魂の番だったら。  ぞわりと嫌な予感がして、一樹は思わず隣に居る梓を見た。  見なければよかったと思ったのは、僅か二秒後のことだ。 「……あ、ずさ」  呼び掛ける声が震える。  梓は呆けたような表情で、初月を見つめていた。だのに、目だけが熱に浮かされたように潤んでいる。  その視線に、初月も梓を見た。  見開かれる初月の目、ふんわりと赤く染まる梓の頬。  一樹はそれを見ただけで、それがどういうことなのか、瞬間的に理解した。  ――魂の番であるαとΩは、一目で惹かれ合うのだ。  Ωで一年生の梓が生徒会に招集されたのは、それからたった五日後の話だ。  次の発情期に、梓は、あっけなく壊れた。

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