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第3話
犬山と猿川と、半ば強制的に雉田をお供に連れて海を渡り、その日の夕暮れに桃太郎達は鬼ヶ島に辿り着いた。
「ここが鬼ヶ島か。随分薄気味悪い所だな」
「奥から随分良い匂いがしますよ。お酒とお肉料理がある筈です」
「犬山、お前俺の側から離れるなよ? お前はすぐメシに釣られてふらふらすんだから」
真っ先に島の奥へ進もうとする犬山の腕を、猿川がしっかりと掴む。
「俺が迷子になっても探しに来てくれるでしょう?」
犬山は愉しそうに猿川の手を振り解き、それから腕に絡み付いた。まるでこれからピクニックにでも行くかのような雰囲気だ。雉田はずっと気になっていたらしい事を質問する。
「あのー、お2人の関係って何なんかね? さっきっから男同士でベタベタとして」
「ふふ、何でも良いでしょう。さあ行きましょ! お肉料理の元へ!」
「鬼のアジトだよ!」
完全に匂いに釣られた犬山に、猿川が素早く訂正する。多分犬山一人だったら、今頃捕まって、一緒にお肉料理になって食われていたんじゃないか。そう考えただけで背筋が凍りそうだが、本人はまるで危機感が無い。
「君たち、もう少し静かにしてくれないか? 奴らに気づかれて待ち伏せられたら勝ち目は無いんだから」
呆れたように言う桃太郎に、猿川は「すまん」と詫びる。雉田は護身用にと落ちていた太くて長い木の枝を拾い、握りしめた。それから歩く事数十秒、鬼達の愉快な笑い声が全員の耳に入る。桃太郎は更に慎重に進み、猿川は一足先に鬼達の溜まり場付近の岩陰に隠れた。先程まではしゃいでいた犬山も真剣な面持ちだ。確認できる鬼は6人。桃太郎達よりも多い
「合図をしたら一斉に飛びかかる。雉田はどうする? 此処で待機するか?」
桃太郎は唯一半ば強制的に連れて来られた雉田を見た。
「いや……いい。ここまで来たらやるしかないでしょ」
「そうか。では行くよ。3、2、1……Go」
それを合図に、4人は一斉に鬼達に向かって飛びかかった。
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