6 / 10

第5話

「いやあ、それにしても桃太郎さん本当に格好良かったなあ。僕、惚れちまいましたよ!」 「ええ?」 「本当だって。鬼を前に怯まず、懐飛び込む勇ましさ! 見事な刀さばき! それでいて一人も殺さないその心意気! そして何よりその美しさ。流石桃太郎さんだ」 「はあ……」  鬼ヶ島を出てからというもの、船を操縦しながら雉田はひたすら桃太郎を讃え続けている。桃太郎は背中がムズムズする感覚に襲われながら雉田の話に相槌を打っていた。犬山も雉田に同意の言葉を述べながらにこやかに話を聞いている。因みに猿川は疲れが溜まっているのか、犬山に膝枕してもらいながら寝ている。  やがて船は港に到着し、それぞれ手分けして取り返した物を抱えながら村に戻った。 「桃太郎さんおかえりなさい!」 「お帰りなさい桃太郎さん」 「よくぞご無事で……」  村の住人が大勢で桃太郎達を出迎える。恐らくお爺さんとお婆さんから聞いたのだろう。そしてそれぞれお金やら宝物やらを手渡して、4人で残ったきび団子を食べてから桃太郎は家に戻った。 「お爺さん、お婆さん、只今帰りました」 「ああ桃太郎! 無事だったかい? 良かった、よく帰って来てくれたねえ」 「お婆さん、心配掛けてすみません。無事に戻りました」  お婆さんは桃太郎を力一杯抱きしめて泣いた。お爺さんは桃太郎の腰から刀を外す。 「お爺さん、刀ありがとうございました」 「怪我はしてねえな?」 「はい。大丈夫です」  それだけ聞くとお爺さんは桃太郎から離れ、刀の手入れをし始めた。お婆さんは未だに桃太郎に抱きついたまま涙を流していた。

ともだちにシェアしよう!