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第7話

 また鬼が出た。鬼退治からひと月もしないうちに桃太郎は猿川からそう聞いた。 「懲りもせずまた来たのか」 「ええ。今回は少数だったから俺と雉田が港で追い払えたもののやはり心配だ。俺はもう一度鬼ヶ島へ行こうと思う。あんたも来てくれないか?」  眉を八の字に下げながら猿川は桃太郎に手を合わせて頼んだ。桃太郎は当然頷き、それを承諾する。  その日の昼、再び2人は雉田に頼み込んで船を出してもらい、鬼ヶ島へと向かった。 「そう言えば、犬山はどうしたんだい?」  港を発ってから雉田は思い出したように訊ねた。猿川はぼうっと遠くを眺めたまま答えない。 「猿川?」 「あっ、ああ……すいません。何のようだ?」 「大丈夫か? さっきからずっとそんな調子で。気分でも悪いのか?」  桃太郎は猿川に水の入った竹筒を渡した。猿川は「別に何もない。平気だ」とだけ返し、礼を言って受け取る。  それから数刻もしないうちに鬼ヶ島へ着いた。 「到着したけど今回はお供しないよ。ここで待ってるから行ってらっしゃい」  雉田は船から見下ろしながら先に降りた桃太郎に向かって言った。猿川も「ああ」と言って船を降りる。 「1人で大丈夫か?」 「ええ、何も心配する事はないさ。直ぐに戻って来るだろうからね」 「そうか、行ってくる」  それだけ返し、桃太郎は雉田に背を向けて鬼の洞窟に向かって歩き出した。やや遅れて猿川もその後を着いて行く。  それから、桃太郎は慎重に鬼の元へと進んで行く。兎に角、できるだけ鬼に気付かれすに接近する事に集中した。それ故に猿川が途中で引き返した事にも気付かなかった。 「おい、こいつこの前の……」 「ああホントだ。また来たのか」 「何だ? 今日は1人なのか?」  背後から声が聞こえ、桃太郎は小さく悲鳴をあげて振り返った。後ろには4人の鬼が桃太郎の退路を塞ぐようにして立っている。辺りを見回して助けを求めようとしたが、猿川の姿は見えない。 「おい、猿川は? お前らあいつに何をした?」  桃太郎はキッと鬼達を睨んだが、鬼は揃えて首を傾げた。 「何を言っているんだ? 最初からお前しかいなかったろ」 「恐怖で気が狂ったか」  桃太郎は訳も分からないまま刀を抜いて構えた。だがどう見ても多勢に無勢。しかも真っ正面から対峙している。当然桃太郎に勝ち目など無く、あっさり鬼に捕らえられた。

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