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寝苦しい夜。ふと目が覚める。
気が付くと、誰かが俺に乗っていた。目の前には泣きぼくろがある男。表情は暗くてよく見えない。
「…………ねぇ。運命って信じる?」
上に乗ってる男がそう言った。
ここは自宅のアパートのベッド。見知らぬ男の存在に血の気が下がる。『泥棒!』、そう叫ぼうとしたら、口を塞がれた。
「しー。騒がないで。近所迷惑になっちゃうから……」
クソ。割と細いくせに力が強い。━━待てよ。刃物とか、隠し持ってる可能性もある。少し様子を見て……
「初めまして。俺はインキュバスのレイン」
インキュバス?夢の中でやらしい夢見せる淫魔の……?阿呆か!泥棒の分際で言い訳が雑すぎる。
「…………俺、初めて一目惚れしたかも」
男がウットリと俺を見る。
━━━━コイツは何を言ってるんだ?
「俺、インキュバスだけど、男の精しか飲めないんです。しかも、自分のタイプじゃないと拒絶反応が出て、毎晩、失敗ばかり…… お腹が空いて倒れそうなんです。お願いします! 悪魔だけど━━人助けだと思って、精液ください!」
………………はぁ?
泥棒はドン引きする俺にそう言った。強盗とかではなく、新手のストーカーか?しかも、よく見たら、俺とそんなに年は変わらない。
どうやって忍び込んだ?『精液くれ』とか、ゾッとする。
トントン。俺の口を塞いでる手を軽く叩く。
「騒がない?」、男の問いかけに黙ったまま、頷く。
「…………あのさ。俺、男となんて絶対に寝ない。女にも困ってないから、帰ってくれ」
とりあえず警戒しつつ、控えめにそう伝える。
「そんな。イキナリ追い出さないで! とりあえず、一回試してみない?男の後ろは狭くて、女の子よりも気持ちいいよ!」
必死に喋る男は思ったより幼い。
「興味ない」
俺が伝えると自称インキュバスの男は涙目になった。
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