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「今までありがとう。 泉…… 俺のこと、忘れないでね」
心臓が嫌な音を立てる。
「お前が処分されるのは違うだろ…… どうせ、一度なくした命だ! 寿命と足りなけりゃ……俺の魂をやるから━━」
「言わないで。泉。 俺、お前の魂はいらない! 幸せに生きて……」
遮られた俺の言葉。悪魔らしくないセリフ。レインはそっと笑った。
サラサラ……
砂の音がして、レインの形が変わり始める。
「だ……ダメだ。きえ、消えるなよ……」
そっと唇が重なる。
━━レインからの最後のキス。
いつも温かい唇は氷みたいに冷たかった。寂しそうなレインの目には涙が滲んでる。
こんな呆気なく終わりが来るのか━━
「…………レイン。 俺、お前に会うまで本当は……寂しかったんだ。 置いてくなよ…… 一人に……しないで、くれ」
自分の声が震えてる。
お前を失いたくない……!俺の寿命でも魂でも取ればいいだろ……
「ごめんね。その願いは叶えられない」
涙目でレインが笑う。
「…………レイン」
繋ごうとした手はキラキラと光って、掴めない。
「俺には……お前だけだ」
レインがそう呟くと、その言葉と共に一瞬で砂のような塵のようなものになってしまい、それすらもあっという間に消えてしまった。
「……………レイン?」
嘘だろ……
「レイン!!」
もう名前を呼んでも、答えが返ってくることはない。
「レイ……ン……」
涙が滲み、目頭が熱くなる。
「━━神でも悪魔でもいいから、俺の願いを叶えろよ! レインを連れて行かないでくれ!」
頬に流れた涙を袖で拭い、大声で叫ぶ。
部屋は静かなまま。
━━━━願いが叶うことはなかった。
…………せめて最後に言ってあげれば良かった。俺もお前といて楽しかったって……
俺もお前のこと━━
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