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「ぐす…… このドラマね、猫がおじぃちゃんに寄り添って生きてくんだ。 ヒック…… あ! このモンブラン、美味しい!」
レインは朝から晩まで本当にうるさい。とにかく、よく泣くし、よく笑う。
「次は俺の番」、泣きながらドラマを見てたレインから、リモコンを取り上げる。
「俺のリモコン!」
「お前のじゃないし」
「次の三角関係ドロドロドラマも楽しみにしてたのに! 泉! お前は意地悪だ!」
「あ? 『お前』だ?」
「おこ、怒んないでよ! 泉の真似しただけじゃん。 怖いよ! 泉の方が悪魔みたい!」
ブルブル震えて涙目になってるレインを見たら、吹き出してしまった。
「━━怒ったり笑ったり、人間は本当に忙しいね……」、レインが不思議そうに言うから、「お前だけには言われたくねぇ」って言ってやった。
…………レインがいると、いつの間にか、笑ってる自分に気が付く。
「レポートまだ? お腹すいたよぅ」
━━━━ここ、3日間。レポート忙しくてレインに構わなかった。
「これ落とすと進級が危険」
「お願い……」
「駄目」
「一口だけでいいから」
「却下」
「泉の意地悪! ドS!」
「うるせぇな。俺は忙しいんだ。 他所 に行って来い」
「…………泉は俺が他の人の所に行ってもいいの?」
「行けよ。 清々する」
言ってから、ハッとした。悲しそうな顔をしてるレインと目が合う。ちょっと言い過ぎたか……?
ガラッ。レインは窓を開け、振り向きもせず、出て行ってしまった。
本当に出て行くなんて……
━━━━アイツは今から他の男に抱かれる。
ふん。良かったじゃないか。毎日、うるさかったし、これでようやく、静かになる。意外と甘え上手だし、男が平気な奴なら。優しい男だったら、きっと俺より懐いて……
静かになった室内。落ち着かない気持ちでボンヤリと窓を見つめた。
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