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第5話 本気の想い

「オレ、黒崎に、沢井には気を付けるように、それとなく言っておこうかな……」  小さく呟いた川上の言葉を、沢井の耳は聞き逃さなかった。 「川上、黒崎に余計なこと言ってみろ、おまえの過去の女関係、みーんな今の彼女にばらしてやるからな」  細くて長い指先をビシッと川上のほうへ向けて、脅しをかける。 「うっ……、分かったよ」  沢井と川上は大学時代からの親友同士だ。川上の昔の女性関係のことは、よく知っている。  逆に言えば、川上も、沢井の華麗な恋愛遍歴を知っているわけだが、なぜだか、沢井にはその手の脅しは効かないのだ。 「でもなー、沢井。黒崎はなんか繊細そうだから、おまえの遊び相手には向かないと思うぞ」 「……誰が遊び相手だって……?」  親友の失言に、沢井は射るような目で、川上を睨んだ。  天使のような美貌の黒崎と比べて、沢井は鋭く冷たそうな美形だ。  なまじっか整った顔立ちをしているために、沢井が怒ると迫力があるのだ。 「……沢井……」  川上は沢井の剣幕に少し臆してしまう。 「オレは黒崎のこと、本気だよ……」  その声はこわいくらい真摯なものだった。  

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