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第9話 無表情な研修医
「気が付いたか。 気分はどうだ? どこか痛むか?」
沢井は黒崎の顔を覗き込み、聞いてくる。
「あ、……いえ。もう……」
大丈夫です、と続けて、起き上がろうとする黒崎を、沢井が慌てて押さえた。
「バカ、当分は絶対安静なんだぞ」
「え……?」
「……肋骨が二本折れてて、そのうちの一本が内臓を傷つけてたから、昨日の夜、緊急手術をしたんだ」
「……今、何時なんですか?」
「昼の一時過ぎ」
沢井はそう答えてから、黒崎の点滴を調節した。そして呆れたような顔で、黒崎を見おろした。
「あのな、黒崎、痛いときは痛いって言えよ。オレたちは超能力者じゃないんだから、おまえみたいに、無表情でいられたら、こんな怪我しているなんて夢にも思わないだろ?」
「……それほどの痛みでもありませんでしたから」
「痛みで気を失うくらいなのに、それほどの痛みでもありませんでした? 参ったね。だいたい、いつ、なんで、こんな怪我をしたんだ!?」
沢井の端整な顔で凄まれて、黒崎は不承不承に、一週間前にことを話した。
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