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第12話 戸惑うばかりで……
黒崎が、自分でもとらえきれない気持ちを持て余していると、今度は川上がやってきた。
「おう、どうだ? 具合は」
気さくに話しかけてくれる、この先輩医師は、確か沢井と同期で大学時代からの友人だという。
「はい。大丈夫です。ご迷惑かけてすいませんでした……」
「いやいや。オレは昨夜はもともと当直だったし、幸いにも他に急患も急変する患者さんもいなかったからね。……でも沢井がとても心配してたよ? あいつは一昨日も当直だったし、おまえの手術が無事に終わったから、帰って休めって言っても、黒崎が意識を取り戻すまでは、って言い張って聞かなくてさ」
「……沢井先生、大丈夫なんですか? そんな二日も続けて……」
「ん? ああ、まあ。本人は元気そうだから。黒崎が意識を取り戻したから安心したんじゃないの? それよりおまえは無理せずにしんどい時はしんどいって言って、一日も早く良くなること。それが一番、沢井のためでもあるんだから」
沢井先生ががそれほど自分のことを心配してくれてたなんて……。
今までまったく知らなかった感情に支配されて、戸惑うばかりの黒崎だった……。
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