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第13話 バツイチ

 エレベーターの扉が開き、沢井の元妻である三月が乗ってきた。  彼女は沢井を一瞥すると、視線を合わさずに話しかけてきた。 「さっき、黒崎の様子を見てきたわ。眠っていたから起こさないでおいたけど。……昨夜は大変だったみたいね」 「ああ。びっくりしたよ。出入り口のところでしゃがみ込んでいるかと思ったら、そのまま気を失っちまって」 「……かわいそうに。ずっと痛みを我慢していたのね。全然気づけなかったわ」 「あの状態で、外来に出て、急患の治療にも当たって……。それも完璧な仕事ぶりだったんだからな。おまけに、あいつなんて言ったと思う? それほどの痛みではありませんでしたから、だよ? それもいつもの無表情で」  沢井は、昼過ぎに黒崎と交わした会話を思い出し、溜息をついた。 「怪我の具合はどうなの?」 「もう大丈夫だろ。手術は成功したし、熱も下がって来てる。あとは安静にしてれば、若いんだ、すぐ良くなるさ」 「そう……」  三月は安堵したように言った。  少しの沈黙のあと、三月は、今度は沢井のほうをキツイ目で見据え、口を開いた。 「黒崎に手を出そうとしてるのなら、やめなさいよ」

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