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第21話 謎と答

 外科医は体力がなければ務まらない。  だから本来ならしっかりと食べて、せめて怪我以前の体重まで戻さなければいけないのだが、黒崎の食は今日も進まなかった。一緒に食事をとっていた人たちに心配されるほどに。  黒崎の食欲不振の原因は、自分の心を悩ませている『謎』だった。  黒崎はもともと理系の人間だ。はっきりとした『答』が出なければ気が済まないところがある。  今、黒崎の心を悩ませている謎……それは沢井のことだった。いや、沢井に対して抱く自分の心の不可解さとでも言ったほうが正しいだろうか。  沢井と目が合う度、体がかすかに触れ合う度、黒崎は今まで感じたことのない感情に捕われて戸惑ってしまう。  うれしいというのも少し違う気がするし、勿論、悲しいというのは全然違う。  どんな言葉を当てはめたらいいのか、まったく分からない。  最初は、両親の愛に恵まれていない自分が、沢井のことを『父親』のように感じているのかと思った。医師としてのキャリアも格段と上にいて、一回り年上の彼に。  確かにそういう一面が全くないとは言えないだろうが、それでも、やはり黒崎のこの感情は、どこか、そんなものじゃないような気がした。  そう、この気持ちは……、  ……切ない……?  不意に黒崎の頭にそんな言葉が浮かんだが、その言葉の響きはあまりにも曖昧すぎて……。

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