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第23話 儚げな彼
風にかき消されてしまわないように、少し大きめの声で呼びかけると、一瞬、黒崎の体が小さく震え、それからゆっくりと沢井のほうへ振り返る。
相変わらずの愛くるしい顔。
その美貌は、何度見てもドキッとする。
――当の本人こそ知らないことだが、このところ黒崎目当てに外来に来る患者が多いそうだ。
『担当が黒崎じゃないって分かった途端、あからさまにがっかりした顔しやがるし、はっきりと、黒崎先生と変えてよー。って言いやがるやつもいる。それもほとんどがこれくらいで病院に来るな! って言いたくなるようなのばかりで。本当にしんどい人にはいい迷惑だよ』
数人の医師たちが苦笑混じりに話しているのを耳にしている。
黒崎目当ての患者は、ほとんどが女性らしいが、中には男性もチラホラいるみたいで、沢井も心穏やかではいられない。
屋上のフェンスを背に立つ黒崎は、やせたせいかとても儚げで、沢井はすぐに駆け寄り抱きしめたい衝動に駆られた。
「……沢井先生?」
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