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第24話 心を見せて
黒崎は表情の変化に乏しい。いわゆるポーカーフェイスだ。
それゆえその内心を想像することはとても難しい。
今もいったいなにを考えているのか、
具合がよくないのか、
屈託していることがあるのか、
その表情からはまったく読み取れない。
沢井は歯がゆかった。
「黒崎、おまえ、あんまり飯、食ってないんだって? そんなんで体力、持つのか? ……もしかして怪我したところが痛むんじゃないだろうな?」
「いいえ。そんなことはないです。……食事もちゃんとしてます」
「嘘言えっ。まったく、手がかかるんだから、おまえは。ほらっ」
沢井は購買部で買ってきたサンドイッチを、黒崎のほうへ投げた。
「せめて、それ一個くらいは食えよ? でないとマジで倒れるぞ」
「……はい」
サンドイッチを受け取った黒崎は、素直にその包みを破り、パンにかぶりついた。
食べてる姿まで絵になるな……。
沢井はそんなことを想いながら、缶コーヒーを片手にゆっくりと歩き、黒崎の隣に立った。
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