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第25話 質問

「なあ、黒崎、聞いていいか?」 「なんですか?」 「おまえ、今、好きな人っているのか?」  手に持っていた缶コーヒーを黒崎に渡しながら問う。  黒崎は小さく、「ありがとうございます」と言うと、プルトップを開け、コーヒーを一口飲み、あっさりと言ってのけた。 「いません」  沢井の予想した通りの答だった。 〈あなたです……沢井先生〉……とは答えてくれなかったな。当たり前だけど。  まあ、黒崎に意中の女性がいないだけでも、よしとするべきか。 「じゃさ、今まで何人くらいの子と付き合った?」 「……は?」 「だからさ、何人の女の子と付き合ったか聞いてるんだよ」  ……まさか、男と付き合った経験があるとか言うんじゃないだろうな?  沢井は少し心配になった。  これだけの美形だし……。  だが、黒崎から返ってきた答えは、 「ないです」  これまたあっさり一言で。 「はあ?」  沢井は思わず間抜けな声を出してしまった。  ないって……、おい。  沢井は目が点になる思いだった。

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