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第33話 居酒屋『画廊』
生ビールと、料理を何品か注文してから、沢井が飾られている絵について説明してくれた。
「ここにあるのは、プロを目指してるアマチュアの作品なんだよ。で、マスターが飾る場所を提供してあげているわけ。な、マスター」
「はい。個展を開こうとすればお金がかかります。でも、一人でも多くの人に絵を見てもらいたいっていうのは、画家を目指す人なら誰でもですし。それで、非力ながら協力させてもらってるわけで……」
マスターが二人分の生ビールとお通しの枝豆を運びながら、にこやかに答える。
「とりあえず乾杯しようか、黒崎」
沢井が生ビールのジョッキを持ち上げる。
「怪我の全快を祝って……乾杯」
黒崎のジョッキに自分のジョッキをコツンと当てる。
「……乾杯……。ありがとうございます……」
黒崎も小さな声で応じた。
「……なんか固いなー。それにこんなときくらい無表情やめれば?」
沢井が苦笑する。
「……こういう顔ですから……」
黒崎はどういう答を返せばいいのか分からずに、無表情のままそう言うのがやっとだった。
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