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第43話 謎の呼び出し
「黒崎先生、高橋 教授から、渡したい書類があるので外来の受付で待っていて欲しいって、電話をもらったらしくて……」
「高橋教授から?」
沢井は聞き返した。
「はい。なんでも、どうしても黒崎先生に直接渡さなければいけない書類だって言われたとかで。そこで座って教授が来られるのを待たれていたんですが……」
「つい眠り込んでしまったってわけか」
「はい」
受付嬢はうなずいた。
しかたない、と沢井は思う。
昨夜は沢井と黒崎が当直だったのだが、交通事故で重体の急患が運び込まれ、夜を徹して手術が行われ、それが無事すんだかと思えば、また別の急患が運ばれてきて、それこそ座る暇もないくらい忙しかった。午後になってようやく一段落ついたところである。
疲れもピークに来ているだろうから、つい眠り込んでも無理はない。
それにしても、と沢井は今度は首を傾げた。
どうして高橋教授は黒崎を名指しで呼び出したりしたんだろう?
高橋教授と言えば、源氏ケ丘大学でもトップクラスの地位にいる教授だ。テレビにも出ているし、著作も多数ある。
……しかし、黒崎と直接の面識はあっただろうか?
いや、だいたいどうして松田部長を通さないで、いきなり黒崎なんだろう。
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