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第47話 最初のキス

「ちょっとごめん」  沢井は受付嬢の横を通り抜けると、黒崎を横抱きにさらいあげた。  その様子を遠巻きに見ていた女性たちのあいだから、なぜか黄色い声があがる。  ……なんなんだ? もう、まったく。  黄色い声を背にその場を立ち去った。  沢井はそのまま黒崎を仮眠室へ運び、狭いベッドへ横たえた。それでも黒崎はまだ起きる気配を見せない。  沢井は愛しい人の寝顔をしばし観賞した。  かわいい寝顔しちゃって……。  いつもは無表情の黒崎も、寝顔はあどけない。  ほんと天使みたいだ……。  その幼い寝顔と対照的に、薄っすらと開かれている唇が色っぽくて、沢井を誘っているかのようだった。 「……黒崎……」  そして沢井は黒崎の愛らしい顔に引き寄せられるように、唇を重ねた。  初めて触れる思い人の唇は、少しだけひんやりとしていて、とても柔らかかった。  ……自分をとめることができなかった。  黒崎の唇に何度も何度もついばむようなキスを繰り返す。愛しさでどうにかなりそうだった。  そのまま口づけに溺れていると、黒崎が小さくみじろいだ。 「……ん……」  ゆっくりと彼の瞼が開いていき、やがて大きな瞳が現れる。 「…………」  黒崎はいまだ意識の半分は眠りの世界にいるようで、されるがままになっている。  沢井は、彼が目覚めてもキスをやめなかった。

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