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第59話 再びの告白
「黒崎、おまえさ」
「……はい?」
「おまえ、もしかして忘れちゃったのか?」
「…………」
「オレはおまえが好きなんだ」
いきなりストレートに告げられて、黒崎は一瞬、心臓が止まるかと思った。
沢井が思い詰めたような瞳で自分を見ているのが分かる。でも、黒崎は真っ直ぐに彼を見ることができなくて。
唇を噛みしめて、思う。
そんなわけない。忘れられるはずがない。
いつだって黒崎はそのことばかりを考えて、沢井を意識しまくっていたのに。
……なにもなかったかのように、忘れてしまったかのように振る舞っていたのは、沢井先生のほうじゃないか……!
心にさまざまな感情が押し寄せるが、言葉を紡ぐことが苦手な黒崎には、それを口にすることができない。
「…………」
唇を噛みしめたまま、うつむいてしまう。
沢井は大きな手で、黒崎の頭を優しく撫でた。
「……そんな顔するなよ、黒崎、オレはおまえを困らせたいわけじゃないんだ。……ごめん」
「……いえ」
沢井先生が悪いわけじゃない。
そう言いたいのに、どうしても言葉が出てくれなくて。
黒崎は、気持ちを素直に伝えることができない自分が、本当に情けなかった。
「とにかくビールでも飲もう。喉乾いただろ?」
黒崎の頭をポンポンと優しく叩くと、沢井はキッチンへと行ってしまった。
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