大きな瞳は熱っぽく潤み、頬は桜色に上気して、唇もいつもより赤い。 　沢井の中で、理性の糸が切れる音がした。 「好きだ……」 　沢井は押し寄せてくる愛しさのままに、彼の細い体を強く抱きすくめた。 　黒崎は刹那、体を強張らせたが、すぐにその体から力が抜けた。 　そう、黒崎は抵抗しなかった。 　されるがままに沢井の腕の中に身を預けている。 「好きだよ……、黒崎……」 　今一度、愛しい人の耳元で、囁いた。 　すると、黒崎が消え入りそうな声でなにかを言った。 「……も……です……」 「ん？　なに……？」 「オレも、好きです……、沢井先生が……」 　今度は沢井にもはっきりと聞こえた。 「……黒崎……」 　沢井は彼を抱きしめる腕を緩めて、黒崎の顔を見つめた。 「……おまえ、かなり酔ってるな、黒崎」 　黒崎が自分を好きだと言ってくれたことは、まさに天にも昇るほどうれしい。……うれしいが、彼は今、酩酊状態である。 　酔った勢いで開放的になっているだけだとしたら、そんな彼をどうこうすることはしたくない。 　でも、黒崎は濡れた瞳で、沢井を見つめ返してきた。 「……酔ってますけど、自分がなにを言っているのかは、分かってます……」 「黒崎……」 「本当は、ずっと伝えたかったんです……」 　黒崎は酔っていてもポーカーフェイスを保っていたが、瞳だけはすがるように沢井を見ていた。 「沢井先生が……好きです……」 「……っ……」 　沢井の中でなにかが限界を超えた。 　そして、沢井は黒崎の唇へ自分の唇を、強く押し当てた……。