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第64話 愛し合うときの始まり

「ダメだよ、黒崎、オレはおまえの声が聞きたい……」  いつもポーカーフェイスで口数の少ない彼がどんな声を出して泣くのか、沢井はとても知りたくて。  自分だけが知る彼の声として、独占したくて……。  黒崎の両手を頭の上でひとまとめにしてソファに押さえつけると、沢井は彼の乳首を唇と指でさんざんいたぶった。  それでも、黒崎は最初は唇を噛みしめて声を殺していたが、やがて耐えきれず、甘い吐息混じりの声を零し始めた。  彼の感じ入る声は、艶めかしく沢井を誘って、愛し合う行為に溺れさせていく。  沢井は唇で乳首を愛しながら、右手は黒崎のズボンの中へ侵入させ、彼を大きな手で直に触った。 「……あっ……」  頭をのけ反らせて、どうしても抑えきれない喘ぎ声を上げる黒崎。  それからは黒崎が快感にとろけるまで、両の乳首と彼を愛した。  他人の手でそこに愛撫を受けることなど初めての彼が、愛液をほとばしらせるのは、すぐだった。 「あっ……、沢井せんせっ……」  遠慮がちな善がり声とともに絶頂を迎えた黒崎は、快感が大きすぎたせいか、体を何度も痙攣させていた。  初めて知る、黒崎がイクときの表情と声を、その痴態を、沢井はしっかりと心に刻みつける。……まさに絶品だった。  これから、この美しい思い人のすべてを自分が手に入れるのだと思うと、おののきにも似た快感が沢井の体を走り抜ける。  沢井は、激しすぎた快感に放心状態の黒崎を横抱きにすると、奥の寝室のベッドへ降ろした。  黒崎の体にまとわりついている衣服をすべて剥ぎ取ってしまい、沢井は自分も着ているものをすべて脱ぎ捨てた。  そして、夢にまでみた思い人の体に、自分の体を重ねていった……。

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