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第81話 強引な彼ら
「オレ、急ぐから……」
黒崎はそう言って、早々にその場を離れようとしたが、一番体格がいいウラワが肩に手をまわしてきた。
「そんなつれないこと言うなよ、黒崎。久しぶりの再会なんだからさ、そこの居酒屋にでも入って、酒でも飲もうぜ。奢るからさー」
通りを挟んだ向かい側にある有名な居酒屋チェーンを指差す。
「いや。オレ明日も仕事だから」
明日は夕方からのシフトだが、昨日は徹夜だったから、少しでも多く睡眠をとりたい。
こんなところでろくに顔も覚えていないような相手と酒を飲んでいる時間などない。
だが、黒崎が彼らの誘いを断っても、ウラワが肩をがっちりつかんで離さなかった。
『いい加減にしてくれ』と、黒崎が半ば本気でキレかけたとき、
「分かったよ。黒崎はほんっと真面目だなー。そういうところ、大学時代から全然変わってねーのな。でもさ、これ一杯飲むくらいは付き合ってくれていいだろ?」
いつの間にかタダマが紙コップに入ったコーヒーを両手に持っていた。
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