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第82話 コーヒーの罠

 タダマが持つコーヒーは、温かそうな湯気を立てている。  その一つを黒崎に差し出した。 「……ありがとう」  紙コップのコーヒーまで断るのはさすがに大人げないし、冷たい夜の空気に体が冷え切っていたこともあって、黒崎は素直に礼を言い、コーヒーを受け取った。  歩道の隅によって、通行人の邪魔にならないようにして、四人は紙コップのコーヒーを飲んだ。  コーヒーは少し苦めだったが、熱くて、黒崎の冷えた体と疲れ切っていた神経をほんの少し癒してくれる感じがした。  コーヒーを飲みながら、三人が騒ぐのを適当に聞き流していると、黒崎は突然ものすごい睡魔に襲われた。  ……あれ、どうしたんだろう?   疲れが出たのかな……?  でも、それにしても、この眠気は……。  考えているあいだにも睡魔はどんどん黒崎を侵食していき、思考さえも曖昧になっていく。  三人の話し声も周囲の喧騒も遠ざかって行く。  黒崎が持っているコーヒーのカップが手をすり抜けて落ちた。  少しだけ残っていたコーヒーが地面に零れて黒崎の靴を汚したが、そのことに気づくこともなく、黒崎の意識は闇に呑み込まれていった。

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