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第83話 不幸な再会
ひどく不快な気持ちとともに黒崎は覚醒した。
軽い吐き気と、心の奥深くから込み上げてくる得体のしれない不安感。
それは、ある種の薬を飲んだときに現れる副作用だ。……いわゆる向精神薬や、睡眠薬の類。
自分の身になにが起こったのか分からず、黒崎はとにかく起き上がろうとしたが、体が動かず、声も出せない。両手を後ろでくくられているうえ、口はガムテープで塞がれているのだ。
いったいどういうことだ? これは。
重くすっきりしない頭で、自分が今までどこにいたのかを思いだそうとしたとき、上から声をかけられた。
「よー、お目覚めかい? 黒崎くん」
その声を聞き、ようやく黒崎は、意識が途切れるまで会っていた連中のことを思い出した。
「いい恰好だな、黒崎。なんかすげー、ソソラれるわ」
ウラワとタダマとオモテリ……。確かそういう名前だったか。大学時代の知り合い。
その三人が、ニヤニヤと厭らしい笑いを浮かべて、横たわる黒崎を見おろしている。
どうして、こんなことに?
……まさか、あのときのコーヒーになにか入ってた?
信じられない思いで、三人を見上げる黒崎の心を読んだように、オモテリが楽しそうに言う。
「そうだよ。あのときのコーヒーにちょっと睡眠薬を入れさせてもらったんだよねー。うまかっただろ?」
「でも、今夜はついてたな。最初はナンパもうまく行かねーし、今夜は薬の出番もなしかなって思っていたけど。まさかあんなところで、大学時代の友人、麗しの黒崎くんに再会できるなんてなー。おまえ、そこらの女なんかより、よっぽど綺麗だもんなぁ……」
タダマが黒崎の髪をつかんで、顔を上げさせた。
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