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第98話 弱さを見せる瞬間

「おまえは、どうしてそんなに本心を隠して、強がるんだ……!」 「強がってなんかいません」 「嘘言うんじゃない!」  沢井の苦しげな声が、部屋に響く。 「……なあ黒崎、オレじゃダメなのか? オレはそんなに頼りないか? おまえの心を支える助けにさえなれないか……?」  沢井に肩をつかまれ、そう言われたとき、黒崎の中のなにかが堰を切って溢れた。  強がって張りつめていた気持ちや、一人で耐える孤独感が涙となって溢れだした。  黒崎は自分から沢井の体にむしゃぶりついた。 「……怖かった……」  それは、黒崎が初めて人に自分の弱さをさらけ出した瞬間だった。 「怖くて、怖くて、たまらなかった。あいつらに殺されるかと思って……! 沢井先生……」  声をあげて泣く黒崎の体を、沢井はしっかりと受け止め、何度も優しく頭を撫でてくれる。  彼の腕の中で、涙は次から次へと溢れ出て、あの地獄のようだった時間をもいっしょに流していってくれるようだった。

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