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第100話 本当の気持ち

 二つの気持ちがせめぎ合い、黒崎はもうどちらが自分の本音なのか、分からなくなってしまった。  ……いや、違う、と黒崎は思い直した。  本当の気持ちは、分かっている。  黒崎は沢井を愛している。生まれて初めて好きになった人で、今も好きという気持ちは育ち続けていて……。  だから、彼の心が少しでも自分以外の誰かに向けられるのは嫌だった。  自分勝手で、わがままで、独占欲の塊……それが本当の自分だ……。 「黒崎? なにをそんなに気にしてるんだ?」  深く考え込んでしまっていた黒崎に、沢井が優しく声をかけた。 「……本当に、いいんですか? 沢井先生は、それで」 「言っただろ? オレが大切なのはおまえだけだよ、黒崎。ずっと一緒にいて欲しい」 「沢井先生……」  さっきさんざん泣いたというのに、また涙が溢れてきそうになった。  ……やだな、泣き虫だと思われちゃうじゃないか……。  黒崎が涙をこらえていると、沢井により強く抱きすくめられた。 「なにも隠さないで、黒崎、オレにだけは本当のおまえを見せてくれ……」  優しく囁かれて、こらえきれなくなった涙が次から次へと頬を伝う。 「愛してるよ……黒崎……」  そして、沢井は自分の唇を、黒崎の唇へと重ねた。

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