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第104話 愛し合うということ

 黒崎が、なにかに迷うようにもじもじしてから、その細い手を伸ばして、沢井の勃起に触れてきた。 「んっ……」  愛する人の手に触られ、沢井の雄は、より固さと大きさを増した。  黒崎の手に触れられたところから、じわじわと快感が広がっていく。  でも……。 「黒崎、無理するな……」  沢井は呼吸が荒くなってしまうのをとめられないまま、彼の手を押し返そうとした。  恋愛事には奥手な黒崎には、こういう行為はハードルが高いだろうから。  しかし、黒崎は沢井の勃起に細い指を絡めて、ぎこちないながらもそれを愛撫し始める。 「うっ……、黒崎……」  激しい快感が沢井を呻かせた。  黒崎のたどたどしい愛撫は、上手だとは言えなかったが、沢井に得も言われぬ気持ちよさをあたえてくれる。  愛し合う行為は、体だけでするものではないのだと、沢井は彼によって気づかされた。  長い時間は持たず、沢井は黒崎の手の中へ、熱い精液をほとばしらせた。  沢井の荒い呼吸が落ち着いてきた頃、黒崎が恥ずかしそうに聞いてきた。 「……沢井先生、気持ち、良かった……?」 「黒崎……」  彼がかわいくて、愛しくて、どうしようもなくて。  沢井は今一度、愛しい人の体を強く強く抱きしめた――。

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