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第105話 親友の心配

          *  真冬の中休みのような暖かな日の午後、川上は親友の沢井のマンションへと向かっていた。  今日は、沢井は午前中までのシフトだったので、多分今頃はマンションへいるだろう。  川上のほうは夜勤なので、出勤までにまだ余裕があった。彼と話をする時間はたっぷりある。  いったい沢井と黒崎の仲はどうなっているのだろう?  黒崎が真っ青な顔をして病院に来た日から、沢井は彼に完全に避けられていた。  だが、黒崎が風邪で無断欠勤をしたときに、心配した沢井が黒崎のマンションへ行き、 翌日、二人は一緒に出勤をして、なぜか黒崎の腹部CTを撮っていた。  川上にしてみれば、本当に、???である。  けれど、二人の関係は黒崎の一方的な冷戦状態から抜け出したのは確かなようだ。  その辺りのことをきっちり聞き出してやろう。あいつは黒崎のこととなると、妙に秘密主義者になるからな。  親友としては、もしまだ問題を抱えているのなら、相談にのってあげたいし、うまくいったのなら、祝福をしてあげたい。  思いを巡らせているうちに、沢井のマンションへ着いた。  六階にある彼の部屋の前に立ち、インターホンを鳴らす。  しばらくの間のあと、ドアが開き、姿を現したのは、 「えっ!? 黒崎!?」  親友の沢井ではなく、彼の思い人、黒崎であった。 「川上先生?」  黒崎のほうも、いつものポーカーフェイスはどこかへ行ってしまい、大きな目をさらに大きく見開いて驚いている。  いつも冷静な……というよりは無表情、無愛想な黒崎は驚きのあと、なんとも照れくさそうな顔を見せ、川上は再び、驚いた。  こいつがこんな表情するなんて……!  初めて見る、黒崎のはにかみの表情に、川上はしばし、見惚れてしまった。

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