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第106話 親友は考える
それにしても、なんで沢井の代わりに黒崎がここにいるんだ?
えーと……、黒崎の今日のシフトはどうだったっけ……?
必死に考える川上に、
「川上先生。入ってください。……沢井先生は近くのコンビニに出かけているだけなんで、すぐに戻ってきますから」
黒崎はそう言って、ドアを大きく開いた。
久しぶりに訪れる親友の部屋は、様変わりしていた。
キッチンの食器棚の食器は目に見えて増えていたし、リビングのソファの背には黒崎のジャケットがかけられている。
テーブルの上に置かれた小さなノートパソコンも、初めて目にするものだった。
部屋の片隅で充電中のスマートホンは、沢井のものではない。
……これは、もしかして……。
ソファに座って、腕組みをし、川上が一つの結論に達しようとしたとき、黒崎が紅茶を運んできてくれた。その様子はもうすっかりこの部屋になじんでいる。
多分、洗面所に行けば、歯ブラシは二本に増えていることだろう。
寝室は……、見たいような、見たくないような、心裏腹ってやつかも。
「……黒崎、おまえさ」
川上ははっきりと本人に確かめてみることにした。
「はい?」
黒崎はもういつものポーカーフェイスを取り戻している。
「沢井と一緒に暮らし――」
そこまで言ったとき、玄関のドアが開く音がして、親友の声が飛び込んできた。
「ただいま、雅文。そこのコンビニ、いつものビール切れてて、向こうの酒屋まで行っちゃったよ」
ま、雅文!?
固まってしまった川上の前で、リビングの扉が開けられ、今まで見たこともないほど甘ったるい笑顔を浮かべた沢井が入ってきた。
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