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肉豆腐③
山田さんはこれまた幼馴染の明のお父さん。
明が肉屋をやり お父さんが魚屋をやっている。
旨いんだよな〜 山田屋のコロッケ。
考えただけで腹の虫が鳴った。
食材が届き さて。とエプロンをつけて
バンダナを頭に巻いて。
今日の献立は。。
頭で考えながら 必要な食材を切っていく。
手際よくどんどん料理を作り バッドにいれていき
ショーケースに並べた。
野菜多めで ボリュームがあって。
ばあちゃんがよく言ってたな。。
「腹が減ってるのが一番ダメ。
人間 腹一杯ならなんだって出来るんだよ。
自然と笑顔にもなるもんだ。」
食べた人が笑顔になる。
この店はじいちゃんとばあちゃんがやっていた
惣菜店で二人が亡くなった後 俺が継いだ。
両親は俺が幼稚園の頃 事故で亡くなり
ずっとじいちゃんばあちゃんに育てて貰った。
ガキの頃から学校が終わると店に来て
手伝いや店番。
友達も家業がある奴が多く 遊ぶのも
この商店街の中や近くの公園。
親は居なくても 周りの大人が親代わりのように
褒めたり叱ったり。
悪さすれば どこの子関係無く怒られて。
いい事があればめちゃくちゃ喜んでくれて。
それは今でも変わらない。
勉強は出来た。
成績はいつもトップ。
それでも高校を卒業して 大学には行かず
この惣菜店で働き始めた。
先生には何度も 奨学金もあるし 成績から考えれば
学費免除も。。って言われたけど。
じいちゃんが体調を崩していたのも
ばあちゃんがその前にガンで手術したのもあって。
この店は二人が大事にしてきた店だから
どうしても守りたかった。
ずっと大事に育てて貰って。
だから絶対に潰さない。
その一心で進路を決めた。
今でも一切後悔は無いし 勉強はしたけりゃ
自分で出来る。
調理師免許も取ったし 栄養学も独学で勉強してる。
成長したけりゃ頑張ればいいだけだ。
二年前に相次いで二人とも亡くなり
まるで死ぬ時も示し合わせたようで。
ずっと二人一緒だったからな。
仲の良い夫婦で いつも陽だまりみたいに
あったかくて。
親が居なくて寂しいと思う事は沢山あった。
辛い思いもしてきたけど。
でも。
何 不自由なく育てて貰ったし。
まあ。
生まれながら 女に興味が無く
ひ孫を見せてやれなかったのは申し訳無かったけど。
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