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肉豆腐④

「おはようございまーす。」 裏口のドアが開き バイトの大和が顔を出した。 「あー。いい匂い。佑さん。朝飯食いっぱぐれて 腹ペコだよぉ。。」 眉を下げ 腹を押さえる。 全く。情けない顔だな。 「そこの皿のヤツ食っていーぞ。 飯は隣で貰って来いよ。俺の分も。 あー。ついでに修んとこで豆腐貰ってきて。」 金を渡すと はーい!とガキのように 小走りに外へ走っていった。 大和も幼馴染。年はかなり違うけど 昔から可愛がっていて 一人っ子の俺にしたら 年の離れた弟みたいなもん。 家も近所で 今は大学に通いながら 講義が無い時にバイトで手伝ってくれていた。 今日は休講だからって朝から来て。 デートでもすりゃいーのに。 背も高く ベビーフェイスで昔からよくモテて。 ただ本人はまだまだガキなのか 女の子と遊ぶより 地元のツレとつるんでいる方が 楽しいらしい。 とはいえ 就活も控えていて バイトばかり させてるわけにもいかない。 そろそろ別にバイト探さないとな。。 隣は米屋で おこわや炊き込みご飯を作って 売っている加代子おばちゃんがやっている店。 うちのお客さんは惣菜をウチで買い 隣でおこわを買って帰る人が多い。 ガキの頃から可愛がって貰い 親戚のおばちゃん みたいな人だ。 イワシの梅煮が出来上がり 前に作っておいた 肉団子と 別容器に置いておく。 この商店街で働く奴らから事前に 取っておいてと頼まれる事は多かった。 朝作った惣菜はほぼ昼で売り切れ 中休みで また作って補充し 夜用に出す。 リーマンが帰りに買って帰る頃には ほとんどが無くなり 残りを自分の飯にするか 完売したら 商店街でなんか食って帰る。 ここには何でもあるし 他に行く事なんて 考えた事も無い。 それがここ半年 この商店街を揺るがす 騒ぎが起こっていた。 バタバタと足音がして大和が戻ってくる。 「加代子おばちゃん おまけしてくれました。」 と山程盛られた山菜おこわのパックを差し出した。 うわー。すげえ量。。 こりゃ夕飯もこれだな。 豆腐を受け取り 大和はすぐに椅子に座って 余った惣菜と山菜おこわに食らいついている。 まだまだ育ち盛りですね。。 気を取り直し 木綿豆腐と牛肉のコマで 肉豆腐を作った。 甘辛い味付けが人気で これだけはいっぺんに 大量に作って鍋から売り 夜用にも回す。 その方が味が染みて断然旨い。 わかっている常連さんは夜買う事にしてるくらいだ。 飯に豆腐と肉を乗せ ツユを回しかけて ガシガシ食うと幸せな気持ちになる。 修んとこの豆腐は豆の味がしっかりしてて 濃い目の味付けでも全然負けない。 この豆腐が無いと この肉豆腐は作れない。 昼飯にそうやって食いたがる人の為に 白米は開店に合わせて炊き上げる。 米は勿論 加代子おばちゃんの所のだ。 さて。 これでよし。 山菜おこわをプラスチックの容器のまま 箸で少し掬い 口に運ぶ。 既に食べ終わった大和が茶碗と皿を洗い 表のシャッターを開ける。 開店を待っていたみなさんに大和は ニコニコと笑みを浮かべながら 「お待たせしましたぁ!いらっしゃいませ!」 と大声で挨拶をした。 今日も一日が始まる。 使った箸を流しに置き 手を洗ってから移動し ショーケースの前に立つ。 「おはようございます。何にします?」 佑はニッコリと微笑んだ。

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