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肉豆腐⑦

さっきも思ったけど デケエな。。 引き摺るのも大変で。 自力出してくれなきゃ無理だったかもしれない。 でも しっかりとした受け答えで 礼儀正しいし さほど威圧感は感じないから不思議だ。 見上げながら おう。と頷く。 「俺は倉田佑。春か。いい名前だな。 すっかり名前負けしてるけど。」 ボサボサ頭に無精髭にダサいメガネ。 薄汚れた着衣にボロボロのスニーカー。 春感は何処にもない。 春感って何だって言われても答えらんないけど。 春は苦笑いを浮かべながら それでも どこか嬉しそうだった。 「今日の分はいーよ。さっきも言ったけど 残りモンや貰いモンだし。 次来る時は ちゃんと金払え。肉豆腐に飯で300円。 うちの容器は小さいから お前が来た時は 大盛りにしてやるよ。待ってるから。な。」 煙草を灰皿に捨て そう言うと 春はコクンと頷く。 体もガッシリしてるし むさ苦しいけど 多分身なり整えればかなりいい男じゃねえかな。。 でも ガツガツ食う姿はガキのようで 口元に笑みを浮かべる表情は 逆に大人びて見える。 随分アンバランスだな。 でも。まあ。悪い奴じゃなさそうだし。 「肉豆腐まだあるぞ。飯も。食うか?」 立ち上がり 空の丼を手に持ち そう聞くと 春は嬉しそうに目を見開き 「いただきます。すごい旨いです。。」と 可愛い笑顔を見せた。 丼に飯を山ほど盛り 豆腐を乗せて その横に肉を置く。 「つゆだく?」 「はい!ありがとうございます。」 俺もつゆだく派なんだよねえ。。 たっぷりと回しかけ ほら。と手渡す。 あんだけ食った筈なのに まるで初めて食う勢いで 春は丼に食らいついた。

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