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肉豆腐19

「もう一回。それやって。」 春は 俺の言葉に ピシッと固まった。 「・・・え?」 「もっかい。」 頭を突き出し 待っていると おずおずと 近づいてきた大きな手が 俺の頭をよしよしと撫でる。 あー。気持ちいいな。。 そっか。 俺は。 セックスより こっちが欲しかったんだ。 頑張ったね。 大丈夫? よしよしって。。。 何かが上がってきそうになるのをグッと堪える。 俺が頭を引っ込めないから 必死にずっと よしよしと撫で続けてくれ 様子を伺うように 顔を覗き込まれた。 顔の半分を覆う髭に ガラス越しの瞳が 優しく見える。 犬コロね。 血が通ってないかのような人間より よっぽどマシだ。 「ありがと。」 頭を戻し 春の手から便箋を取る。 一ノ瀬春 5月生まれの27歳 神奈川県横浜市出身 無職 「特技は何ですか。」 背筋を伸ばし そう聞くと 春も釣られて姿勢を正した。

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