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肉豆腐23
「じゃあな。ゆっくり寝ろよ。」
そう言って 部屋を出ようと襖に手をかけると
「佑さん。」と声がかかった。
ん?
振り返ると 春は布団の上で正座して背筋を伸ばす。
綺麗な姿勢。
コイツ 躾はかなり厳しくされてきたのかな。
見た目の見すぼらしさとは真反対の礼儀正しさ。
鍛えられた体に 真っ直ぐな瞳。
本来はこんな風に落ちぶれるような奴じゃ
ないんじゃないか。
なんでこんなになっちゃってんだろ。
それは内心ずっとそう思ってた。
まあ。だから正直尚之が言う事も考えられるなとも。
でも そんな企みがある奴はこんな目をしてない。
曇りが一切無い綺麗な瞳と真っ直ぐな目線。
そうも思った。
バカだってまた言われるかもしんないけど。
「どした? 喉乾いたら 勝手に冷蔵庫から
適当に飲んでいーよ。
殴られたとこ痛かったら氷も使え。
タオルはさっきの棚に入ってるし
自分の家だと思って自由にしていいからさ。」
「ありがとうございます。あの。
見ず知らずの俺みたいな奴に 最初からずっと
本当に良くして頂いて。
頂いたご恩に報いるように一生懸命頑張ります。」
深々と頭を下げる。
近づいて ポンポンと頭を叩いた。
「こちらこそよろしくな。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
部屋の電気を消して 襖を閉める。
俺もゆっくり寝れそうだな。
色々疲れたけど なんだか気分がいい。
大きく欠伸をして 自分の部屋へと向かった。
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