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肉豆腐25
「野良猫ですか。」
座るように促され 横に座ると
ボスらしきデカイ猫が俺をジロッと睨みつける。
見ない顔だな。なんだお前。
そう言われた気がして 急いで頭をペコッと
下げると 佑さんにくすっと笑われた。
「今は俺以外 この家に誰も居ないからな。
警戒されてんだろ。」
煙草を灰皿に押しつけて火を消し
よっこらしょと立ち上がる。
猫さん達は腹がいっぱいになったのか
日向ぼっこを始めたり 何処かへ行ってしまったり。
ボスさんは 庭の芝生の上で丸くなって
一度俺を睨みつけると 目を瞑った。
隣の和室から 線香の匂いがしてくる。
立ち上がり 歩いていくと 佑さんが
仏壇の前で 線香に火をつけていた。
ご家族の写真。
全員 佑さんを残して この世を去ったのか。
佑さん。お父さん似だな。
写真をじっと眺めていると
「毎朝 これだけは欠かさないようにしてんだ。」
そう言って 手を合わせて目を瞑る。
隣に座り 同じように手を合わせた。
すいません。こんな事になりましたが。
お世話になります。
ちゃんと。。ちゃんとやってみせます。
心の中でそう告げて 目を開けると
佑さんは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとな。さて。飯食って出かけるぞ。
身の回りの物 買わないとな。」
「あ。でも。俺 早速掃除でも。。」
佑さんは俺の腕を引く。
が 正直 ほぼ引かれた気がせず 敢えてそのまま
座っていると この野郎。。と
ムキになって俺の腕を何度も引いた。
結局ビクともせず 大きなため息をつくと
ギロッと俺を睨みつけ 顎をしゃくる。
まずい。
慌てて 立ち上がる。
佑さんは腕を組み 俺を見上げて口元を緩めると
「今日は休み。休む時は休め。
っつっても買い物も仕事だからな。
ちょうど切れてる物もあるから荷物持ち。
ちゃんと働いて貰うよ。働いて その対価として
飯食わせてやる。働かざる者食うべからず。
そのビクともしないデカイ体分だからな。
いっぱいこき使ってやるぞおーっ。」
そう言って ポスッと俺の腹を打ち
ニカッと向日葵のように笑った。
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