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肉豆腐30

ガラガラと引き戸を開けると いらっしゃい。と 声がかかる。 「こんにちは。」 佑がそう返事をすると カウンターの中から 白髪のマスターが おう。と手を挙げた。 「なんだ。佑。デカイの連れて。」 デカイのって。。 俺を見下ろしている春は 身を縮めて ペコリと頭を下げる。 コイツ。今日一体何回頭下げてんだろ。 いい街と言っても必ずしも新しく来た奴 みんなに温かいわけじゃ無い。 村社会だから 誰だコイツから大体入るし うまく馴染めず去っていく人もいるくらいだ。 だから買い物がてら顔を売っておくのも ちょうどいいかなとは思ったんだけど。。 窓側のテーブルに座り 壁のメニューへと 目をやる春に向かって 「なんかごめんな。挨拶ばっかりで疲れただろ。」 と聞くと 目を丸くしふるふると首を振った。 「疲れてないですよ。それに俺が馴染めるように 気を遣ってくれたんですよね。有難うございます。 みなさん優しいですし 嬉しかったです。」 そう言ってニッコリと微笑んだ。 ああ。わかってはいたのか。 そっか。。 さっき春の居場所になるって言って 複雑な表情を浮かべた気がしたから 気になったんだけど。 気のせいだったのかもしれない。 「洋食屋さんなんですね。」 春はワクワクしているかのように 笑みを浮かべたまま店内を見回した。

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