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肉豆腐31
マスターの木村さんが水を持ってきてくれ
「おう。デカイの。うちは何でも大盛りだから
いっぱい食えよ。」と言ってくれた。
この店【洋食屋クルトン】のマスター木村さんは
俺の親父と同級生で ガキの頃からずっと
可愛がってくれている。
親が亡くなって色々と手配をしてくれたのも
この木村さんだったって聞いていた。
「デカイのって。。春って言うんだ。
明日からうちで働くから よろしく頼むよ。」
そう返すと 木村さんはふーん。と言い
「あの店にコイツが居たら余計狭く見えるだろう。」
とケラケラ笑った。
まあ。確かに。
うちはこじんまりとした店で
ショーケースの後ろに春が立ったら
なかなかの迫力かもしれないな。。。
想像してくすっと笑う。
春もそう思ったのか苦笑いを浮かべながら
「宜しくお願いします。」とまた頭を下げた。
木村さんは じっと値踏みするように春を眺め
ふっと笑うと
「佑はずっと一人で頑張ってるから
力貸してやってくれ。よろしくな。」
そう言って 春の目の前にメニューを置き
「入社祝いに好きな物奢ってやるから何でも食え。
遠慮するなよ。俺は遠慮する奴が一番嫌いだ。」
腕を組んで にやりと笑った。
「入社って。。バイトだよ。」
「まあ。だろうがそれでもこの街に住むんだろ。
ああ。もしかして住み込みか?」
ちらっと椅子に置いた沢山の荷物へと目をやる。
勘がいいんだよな。木村さん。。。。
春が訳ありなのも見抜かれた気がした。
俺が知らない奴を連れてくること自体が珍しいし
紹介しようとしてるのも先回りして
気づかれてたのかな。。
それでも無条件に受け入れてくれるのは
多分俺を信じてくれてるからだ。
こういう時は正直に言うに限る。
「うん。行くとこ無いらしくてさ。
だったらうちで働いて家の事も
やって貰おうかと思って。
あの家 無駄に広いし部屋も余ってるから。」
「家政夫代わりもか。佑は人使いが荒いな。
デカイの。ちゃんと金貰えよ。」
木村さんはそう言って ケラケラ笑いながら
カウンターへと戻っていった。
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