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肉豆腐32
ハンバーグとポークカツレツを頼み
水を飲んでいると 引き戸が開き
常連の笠井さんが慌てたように中に入ってきた。
「木村さんよ。聞いたかい。昨日の夜
前ちゃんの所にガラの悪い奴らが
押しかけてきたってよ。かなり暴れて。。」
「笠井さん。」
遮るように名前を呼ばれ 笠井さんは
ハッと俺たちへと目を向け バツが悪そうに
顔をしかめる。
「佑ちゃん居たのか。ごめんな。騒がしくして。」
「ううん。大丈夫だけど。なんかあったの。」
いや。。あの。。と口籠もり 木村さんへと
視線を向けた。
「佑は心配する事無いから気にするな。」
「うん。でもさ。また地上げ。。」
「大丈夫だ。少し騒ぎがあったらしいが
陽太がすぐに前ちゃんの店に行ってくれたらしい。」
陽太兄ちゃんは俺たちの二個上の先輩で
警官になり 近くの交番にいる。
前山さんの店は小さな居酒屋で
地上げ屋が嫌がらせに暴れたのかもしれない。
また始まったのかな。。
寄り合いで その手の話にはなるが
基本的に古株の人達が対処にあたっていて
あまり俺たち若造には話をしないように
している節がある。
直接被害が出たら そうも言ってられないけどな。。
とはいえ 山田さんを中心に対応している現状
口を挟める余地もなかった。
木村さんはハンバーグとポークカツレツを
テーブルに置き 山盛りのライスとスープを置いて
「ほら。いいから食え。残すなよ。」
ワザとらしく春をちらっと睨み
笑いながらカウンターへと戻り
笠井さんもカウンターの椅子に座った。
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