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肉豆腐34

「春って好き嫌い無さそうだよな。」 スープを飲みながら そう聞くと 少し考えてから そうですね。と頷いた。 「食った事無い物はわかりませんが 何でも食べます。ああ。でも。。」 ちらっと木村さんへと目を向ける。 ん。 なんだ。 木村さんは笠井さんにコーヒーを出し 何やら小声で話している。 春は俺に視線を戻すと 「でも。人生で一番旨かったのは 佑さんの肉豆腐でしたけど。」 そう小声で言って パクッとデカイ ハンバーグの塊を口に入れた。 そりゃ。。 「何にも食ってないで食えば 旨く感じるだろ。」 「そうですか。でもその後何回食っても やっぱり旨かったです。 お客さんも皆さん佑さんの料理が好きなんだなって 買っていく様子を見ていて思いました。」 例の如く お世辞感ゼロで 春は淡々とそう言った。 なんかちょっと気恥ずかしい。 全く。。 「そんな事言ってると まかない毎日 肉豆腐にするぞ。」 「ホントですか。」 春はキラキラと目を輝かせた。 脅しにもならない。 あー。 コイツ。マジか。 苦笑し 水を飲みながら 「春って一度好きになったモン ずーっと好きなタイプか。飽きるまで。」 いるんだよな。そういう奴。 飽きるまでは 延々と食い続け 飽きたらもう二度と食わない。 よく知ってる。 興味があるうちは食べたがり 要らなくなれば二度と食べない。 その日が来るのを 俺はただ待ってるだけ。。 また 尚之との事が脳裏をよぎる。 まあ。アイツは別に俺が好きなんじゃない。 俺とヤル事が物珍しく 好きなだけで 飽きたらもう 見向きもしないだろう。

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