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カフェオレ⑥

佑さんは普段仕事中はピシッとしていて 動きも早く 料理の手際も良い。 店内はいつも綺麗で几帳面。 でも その反動か 家では緩みっぱなしで パンツ一丁でビールを飲んで ゴロゴロと縁側で寝転がっている。 まだ肌寒いからとスウェットを持っていくと えー。めんどくせえ。。って言いながら やっと着てくれるくらいだ。 今まではあまり飯も食わなかったのか 「春が来てから一緒に飯食うよーになって 太った気がする。」 って笑っていたけど すらっとして 程よく筋肉のついた体は 太ったようには見えない。 ボンヤリ月を見上げている佑さんは どこか普段と違って 心細げで。 それでも 俺に気づくと ふっと優しく微笑んだ。 深く踏み入れさせない壁を感じるけど。 少しでも役に立ちたいと思いながらもう一か月。 早かったな。。 「たいして入ってないけど これで 少し好きな物買えんだろ。 ああ。それから 店の休み。いくら言っても 家の事 やってくれてるけど 遊びに行ったりしろよな。 金無いかと思って黙ってたんだけどさ。 これからはバイト代あるんだし 気にしないで 自由にしとけ。な。」 そう言って カップに口をつけた。 金が無いかと思って。。か。。 そう言いながら 無いと困るだろ。と 少し事前に渡してくれたのに 多分それも引いていない。 手付かずで取ってあるから返したいけど 言えば 生活費だって言いそうだな。。 遊び。。 ああ。じゃあ。。 「佑さん。明日の休み。空いてますか。」 へ? 口を開け ああ。。うん。と頷く。 「付き合って欲しい所があるんです。」 へ。 また 口を開け いいけど。。と言いながら それ以上説明しない俺に ちらっと視線を 寄越しながら 煙草を灰皿に押しつけ ずずっと またカフェオレを飲んだ。

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